パナソニック、円安で利益350億円上振れも リストラ先延ばしには警戒感

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円安効果で上振れ期待も、リストラ先延ばしに警戒

業績計画には上振れ要因もある。直近で一時、対ドルで102円までつけた、円安傾向である。

パナソニックは今期の為替レートとして、1ドル=85円、1ユーロ=110円、1人民元=13.7円を前提としている。同社によれば、1円円安に振れれば、対ドルで150億円の営業増益、対ユーロでは340億円の営業増益、対人民元では逆に140億円の営業減益といった影響が生じるという。

足元では1ドル=100円超、1ユーロ=130円超まで円安水準に振れていることから、この水準が続けば、「合計で(通期)350億円の営業利益の押し上げ効果が出てくる」と河井常務は説明する。

警戒すべきは、こうした円安による追い風が、リストラ計画の先延ばしにつながることだろう。会社側の今期計画を達成しても、AVC部門の営業利益率は約1.8%と低く、AIS部門もなお約3.0%に過ぎない。会社側が新中期計画の目標値として掲げた2015年度の営業利益率目標5%に比べると、まだまだ低水準だ。

「まずやるべきことは、一刻も早く赤字事業をなくすこと」。中期計画の発表会見の冒頭で、そう宣言した津賀一宏社長の実行力が問われる1年となる。

(撮影:尾形 文繁)
 

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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