トヨタとダイハツが「二人三脚」で狙うもの 新カンパニー発足で苦手分野を克服へ

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2011年3月にトヨタが発表した中期目標「グローバルビジョン」では、2015年に先進国と新興国の販売比率を50対50にする目標を打ち出していた。しかし、2015年度の新興国比率は約4割にとどまっている。その原因として、東南アジアや中南米など中国以外の新興国は経済低迷により市場自体が伸び悩む一方、米国や欧州などでは思った以上に市場が伸びたことがある。

ダイハツがインドネシアで展開する「シグラ」。トヨタブランドでも販売している

ただ目標に未達なのは、新興国での需要の低迷だけではない。豊田社長らが認めるように、そうした国々で売れ筋となる小型車でトヨタが強さを発揮できていないのも事実だ。

「両社で合弁会社を作るイメージ」(トヨタの寺師茂樹副社長)の新カンパニーで攻略しなければならないのがインド市場だ。ここではスズキが50%近くの乗用車シェアを握る。一方でトヨタは4%前後と低迷中。2010年、インド向けに戦略車「エティオス」を投入したものの、価格と性能のバランスを取れず惨敗している。これまでもダイハツとの連携でのインド戦略は検討されてきたが、まだ実現していない。

スズキの牙城、インドを崩せるか

新カンパニーを作ったからといって、インド攻略が簡単になるわけではない。トヨタのコスト構造ではインドで戦えないことははっきりしている。ダイハツが主導して現地の部品調達先から開拓する必要がある。そしてスズキの壁が高いのは、現地での販売網でも同じだ。いずれにしてもハードルが高いことは確かだ。

もちろんこれはトヨタも承知の上のこと。カンパニー制導入に当たって豊田社長は、「組織改正はソリューション(解決策)ではなく、オポチュニティ(機会)である」と強調してきた。新カンパニーがうまくいくかどうかは、まさにこれからの取り組み次第。ダイハツの位置づけを明確にしたことで、いよいよ始まる新興国への反転攻勢に注目が集まる。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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