東芝の13年度業績、“慎重”見込みの本音 営業利益3割増を計画も、550億円のリスク織り込む

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東芝は5月8日、前年度(2013年3月期)決算を発表した。売上高は12年3月期比4.9%減の5兆8002億円、営業利益は同4.1%減の1943億円と、2期連続の減収減益だ。

誤算となったのは、デジタル製品と原子力発電の2事業である。もともとテレビ事業は赤字覚悟だったが、在庫の解消に向けて販促費が膨らんだことに加え、日本のみならず欧米でも販売不振に直面。さらに海外で生産したテレビを国内に輸入する際、円安が逆風となり原価がかさむ格好となった。結局、テレビ事業の部門赤字は500億円弱まで膨らんだ。部門赤字は2期連続だ。

パソコンは2年前から2割超も減少

タブレットやスマートフォンの市場拡大に押され、パソコン事業も苦しかった。北米の需要減少が響き、部門売上高は12年3月期比14%減の7051億円まで縮小。10年度(11年3月期)と比べると、実に2割超も落ちた計算となる。国内販売は堅調だったが、テレビ同様に円安が逆風となり、利益に関しては苦戦を強いられた。

さらに計画未達となったのが、国内の原子力事業だ。東日本大震災後は復興需要でフル稼働となり、12年度も続くと見られていたが「下期はほとんど売り上げを立てられなかった」(久保誠執行役専務)。顧客である国内電力会社は注文条件を厳しくしており、収益を上げることが難しくなっているという。火力発電や海外原子力などは堅調だったが、補うまでに至らなかった。

唯一、好調だったのは電子デバイス。NANDフラッシュメモリが大健闘した。東芝は昨年7月以降、減産を実施することで値崩れを防いで収益改善を優先させてきた。この効果は大きく、部門売上高は減収ながらも、部門利益は同21%増の914億円となった。電子デバイス部門では、円安効果も追い風となった。

こうした流れを受けて、今年度(14年3月期)の会社計画は、かなり慎重だ。売上高は前年度比5.2%増の6兆1000億円、営業利益は同33%増の2600億円を見込む。このうち為替の影響は、売上高で2800億円、営業利益で400億円のプラス要因となり、増収増益のかなりの部分を円安効果で稼ぐ内容となっている。

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