トヨタの対話型ロボットが問う「愛のカタチ」 愛車に続き、ロボットがパートナーになる日

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さまざまな仕草や会話は、主に専用アプリをインストールしたスマートフォンと、キロボ本体を近距離無線通信「ブルートゥース」でつなぐことで実現している。マイクは3つ搭載されており、それで声がどこから聞こえるか認識して、その人の方向に顔を向ける。また本体に搭載したカメラで人の表情を認識して、感情を推定して動作や会話を行う仕組みだ。

生産は2014年7月にソニーから事業分離したVAIO(バイオ)と協業し、同社のある長野県安曇野市で行う。

トヨタの吉田守孝専務役員は「この大きさでやるにあたって、バイオのパソコンの高密度実装技術は大変すばらしい。キロボの中にもいろいろな基板がたくさん入っている。実際にバイオを安曇野で生産しており、その生産や部品交換、修理のノウハウを多く持っている。そういう意味でVAIOと協業できるのは大変ありがたい」と話す。

トヨタが考える"愛"のカタチ

トヨタの吉田守孝専務役員(右)と片岡史憲・MS製品企画部主査(左)(記者撮影)

なぜトヨタが一般消費者向けのコミュニケーションロボットを出すのか。きっかけは“愛車”という言葉だという。

吉田専務役員は「車は数ある工業製品の中で“愛”がつく数少ない製品。車はドライバーの操作に呼応、反応する。これは人と車のコミュニケーションに他ならない。車とは同じ時期、同じ景色を見て、思い出が増える中でパートナーのように心を感じる。これが信頼、愛着につながる。それを車とは違う形で作るチャレンジだ」と説明する。

価格面でも気を遣った。「(キロボ ミニは)スマートフォンほどの機能は備わっていない。昨年の東京モーターショーでお客様に体感してもらい、2000のアンケートを取る中で、この価格を設定した」(吉田専務役員)という。

キロボはトヨタがクルマづくりの根底に置いている「人に寄り添い、心を動かす」という理念をクルマとは違う形で表した新たなモノ作りのチャレンジ「トヨタハートプロジェクト」の一環として具現化したものだ。

トヨタはキロボ ミニを10月4~7日に開催されているエレクトロニクスの総合展「シーテック」に出展している。車離れが言われる中、愛らしいロボットをアピールし、従来の自動車ユーザー以外も開拓したい狙いだ。「クルマとは違うチャレンジ」と話すトヨタ。キロボ ミニは未来のトヨタに向けた大きな一歩になるかもしれない。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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