日本の御家芸に大誤算 簡易型カーナビの猛威

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機能抑制と水平分業でケタ違いの利益率実現


 そもそも、ガーミンやトムトムがPNDで欧米を席巻したのは、圧倒的な“低価格”を実現したからだ。廉価モデルで200ドル前後。インダッシュ型の7分の1程度と強烈な安さだ。しかも、ガーミンやトムトムはただの安売りメーカーではない。営業利益率は両社とも25%前後とパイオニアの7%(カーエレクトロニクス部門のみ)、アルパインやクラリオンの2%台をはるかにしのぐ。

なぜ、低価格で販売して高利益を実現できるのか。一つはインダッシュ型とPNDの開発費の違いだ。一例を挙げると、インダッシュ型が得意なパイオニアは、08年3月期にカーエレクトロニクスへの研究開発費に227億円(カーエレクトロニクス部門売上高の6%)をつぎ込んでいるが、ガーミンはわずか61億円(同2・5%、07年12月期)にすぎない。

確かにインダッシュ型は非常に高機能である。たとえば、衛星からの信号を読み取って位置確認するGPS(全地球測位システム)を使っていながら、トンネルに入っても画面上にクルマの位置を表示できるのは、GPSのほかに車速パルスとジャイロセンサーといった車体の向きや速度を計測する装置を搭載しており、現在、走っている位置をナビ自らが計算しているからだ。

地図は道路や目的地までのルートだけでなく、周囲の建物や近くのガソリンスタンド、コンビニなど細かい情報まで表示する。ほかにもCD、DVDの再生機能や、最近ではiPodとの接続など、AV機能も強化されて非常に便利になっている。

さらにインダッシュ型は、車の振動や真夏の直射日光の下で長時間駐車するような劣悪な環境下でも壊れないように、設計や部材の“すり合わせ技術”が必要。こうした性能をすべて一つの箱に収めるのだから、コストが膨らむのも当然である。

一方、PNDは機能を絞り込んでいる。自車の位置を割り出すために使うのはGPSのみで、画面表示される地図も、自車の位置と目的地までのルートを矢印で表示するだけの単純なもの。取り外して持ち歩くことができるため、車内の環境を気にする必要はない。万が一壊れても、200ドル前後なら新しく買い替えればいいという消費者も多い。必要以上の機能を盛り込まないことで、開発費を抑制しているのである。

低価格を実現するもう一つの秘密は、圧倒的なスケールメリットである。たとえばガーミンは台湾で自社生産、トムトムは設計まで関与し生産は外部という違いはあるが、両社とも07年の出荷台数は1社で900万台前後。パイオニアの市販ナビの出荷台数64万台(08年3月期実績)など足元にも及ばない規模であり、部材費などの大幅な削減が可能だ。

こうしたPNDの台頭は、インダッシュ型を得意とする日本のカーナビメーカーにとって大誤算だった。カーナビ普及の青写真がなくなってしまったからである。

そもそも、カーナビは日本発祥の製品。特に1990年、パイオニアが世界初のGPSカーナビを発売して以降、日本のメーカーが競うように新商品を投入し、世界一普及が進む市場を形成してきた。高度な技術を必要とするため、参入障壁も高く、日本のメーカーの独壇場だ。

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