日本株に忍び寄る「欧州発10月危機」の足音 ドイツ銀の株価が物語っている状況の深刻度

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さらに、市場ではもう一つの懸念が浮かび上がっている。それはドイツ銀行の問題である。

市場関係者の一部には、この問題はリーマンショックのようにはならないとの声もある。しかし、この見方は全くの理解不足である。

そもそも、リーマンショックは、名前こそそのようについているが、実際にはサブプライムローンショックである。実際の問題発生は2007年初めごろである。リーマンが破たんしたのは、2008年の9月であり、相場こそ大きく変動したが、問題が収束する最終局面であった。

そもそも、海外では、これら一連の問題をリーマンショックとは呼ばない。「金融危機(Financial Crisis)」である。これを理解していない市場関係者がいまだに多い。

リーマン自体は、市場でも主導的な立場にあったわけではなく、市場では「つぶれても仕方がないだろう」と考えていたほどである。だからこそ、米国政府が見放したのである。

筆者も含め、プロの市場関係者が驚いたのは、リーマンクラスの金融機関が破たんしたことによる市場の反応に対してだった。逆に言えば、市場がその時期においても、まだポジションの処理が進んでいなかったということである。

ドイツ銀行の株価が物語る、状況の深刻さ

いずれにしても、今回のドイツ銀行の規模とリーマンブラザーズのそれとは、比較する意味すらない。それだけ、規模が違う。そもそも、同行に問題がなければ、株価が上場来安値を付け、年初来でも半値以下になるようなことはないだろう。

そして、その株安の元凶はサブプライムローン問題とみられているのだから驚きである。「この問題がいずれ大きな惨事に発展する可能性は相当高い」と考えるのが常識的であろう。

現在の市場には、思っている以上に非常に多くの火種がある。もちろん米大統領選もそのひとつである。26日の候補者テレビ討論会(第1回)では、民主党候補のクリントン氏が共和党候補のトランプ氏を上回ったもようだが、討論会はあと2回ある。

また、有権者が最終的にどちらに投票するかは未知数である。いずれにしても、懸念材料が満載の秋に、米国株は1年で最も下げやすい3週間の真っただ中にあることになる。

もし10月半ばまで、現状の株価水準が維持されていれば、筆者にとってはそれは驚きでしかない。最終的に市場がどのような判断を下すのか、じっくりとみていきたい。

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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