乱立する「インフルエンサー代理業」の正体 契約をめぐる不透明な関係が露呈しつつある

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同社と契約するママブロガー、ステファニー・パス氏(@tiptoefairy)の例を見てみよう。彼女は、インスタグラムに8623人のフォロワーと、フェイスブックに1万5755人のファンを抱える。そんなパス氏は今年5月、赤ちゃん用ウェットティッシュ「ハギーズ・ワイプス」を取り上げた長文記事「DIY Sidewalk Foam Paint(歩道に描いて簡単に消せるDIYフォームペイント)」を自身のブログに投稿した。コレクティブ・バイアスによると、この記事はこれまでにフェイスブックで2320のシェアを、ピンタレストで13万5000のピンをそれぞれ獲得しているという。

「タレントエージェンシーは通常、何百万人ものフォロワーがいるセレブ風インフルエンサーの代理人業務を行うが、我々はそれよりも小規模な『パワーミドル』のインフルエンサーたちと仕事をしている」と、パブリカ氏は説明する。「インフルエンサーのフォロワー数が10万人を超えると、パフォーマンスが低下する傾向が強まっていく」。

勝手気ままなインフルエンサー

しかしだからといって、技術プラットフォームがタレントエージェンシーと協業しないわけではない。約300人のインフルエンサーをマネジメントするタレントエージェンシーのバイラルネーションは、アイジアや、Twitterが所有するニッチなど、5つのテクノロジープラットフォームに、同社のインフルエンサーの記載を許可している。同社はこれらの企業に対し、キャンペーンベースで料金を請求しているが、正確な数字は明らかにしていない。

「これほど多くのインフルエンサーの代理人を務めていると、彼らにメディア露出の機会をできるだけ多く与えたいと思うものだ」と、バイラルネーションの共同創設者でマネージングパートナーのジョー・ギャグリース氏は語る。「もちろん、当社の許可を得ていないプラットフォームに対しては、つねに弁護士に書状を送らせ、当社のインフルエンサーを削除するよう要請している」。

インフルエンサーマーケティング技術を手がけるミューズファインドのジェニファー・リーCEOによれば、前途有望なインフルエンサーの多くはいずれにせよ、自身の枠を広げることに意欲的なため、エージェントの知らないところで独自にプラットフォームを活用しているという。

「私が疑問に思うのは、プラットフォームに1対1の関係を築く必要があるのか、ということだ。それはちょうど、誰もがiPhoneを使っているが、ティム・クック氏との個人的な関係は必要ないのと同じだ」とリーCEOは語る。「タレントエージェンシーは手作業のアプローチをとっている。プラットフォームとしての我々の仕事は、そのプロセスとスケールを加速させることだ。自身がB2Bの側にいるならタレントエージェンシーと協働すればいいし、B2Cの側ならプラットフォームと協働すればいい」。

1対1の関係は必要条件ではないかもしれないが、一部のテクノロジープラットフォームが自らを売り込む方法は誤解を招くものだ。一方でエージェンシーは、エージェント経由にせよ直接連絡にせよ、プラットフォームとインフルエンサーのより親密な関係を求めている。エージェンシーのRPAでデジタルストラテジー部門の責任者を務めるマイク・ドセット氏が米DIGIDAYに最近語ってくれたように、「ベンダーとインフルエンサーの契約が緩ければ緩いほど、ブランドにとってプロジェクトのプロセスを把握することが、ますます複雑になる」。もしそうなれば、結果的にアルゴリズム主導のアプローチによって、エージェンシーとブランド、ベンダー、インフルエンサーは途方もない時間を浪費させられることになるかもしれないのだ。

Yuyu Chen (原文 / 訳:ガリレオ)

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DIGIDAY[日本版]編集部

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