フェラーリ「GTC4ルッソT」の隠れた初挑戦 4人乗りV8ターボはAWDを継承しない

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今回発表されたスペックによると、排気量は3855cc。つまり3902ccの「488GTB/488スパイダー」ではなく、「カリフォルニアT」と基本的には共通のユニットをセレクトしたことになる。

ただし610ps/7500rpmの最高出力、760Nm/3000~5250rpmの最大トルクともにカリフォルニアT用ユニットから増強されており、320km/h以上を標榜する最高速度3.5秒の0-100km/h加速タイムともども、より小型・軽量なカリフォルニアTを凌ぐもの。フラッグシップの一角を占めるモデルとしての面目は保たれている。

もっともV8ターボエンジンは市街地でのデイリーユーズも念頭に置いたチューニングを受けているとのこと。また低回転域こそ控えめながら、高速走行ではパワフルなエンジンサウンドを発するとともに、フレキシブルなモジュラートルク伝達による低回転域からの迅速なピックアップを広範囲で実現させているという。

カリフォルニアT駆動システムを移植した新型

そして、この新型GTC4ルッソTでもうひとつ注目すべきは、旧フェラーリ フォー(FF)からGTC4ルッソに継承されたAWDではなく、コンヴェンショナルな後輪駆動とされていることだ。つまりは、カリフォルニアTのパワートレーンと駆動システムを移植したのがこの新型ということになる。

車両重量は、AWDのユニットを取っ払ったことで、GTC4ルッソの1790kg(乾燥)に対し、GTC4ルッソTは1740kg(乾燥)と50kg軽い。加えてフロント46:リア54というリアヘビーとした前後重量配分、そしてサイドスリップコントロール(SSC3)とともに装備された4WSシステムによって、ダイナミックな走行性能とエレガンスさ、至高の快適性、スポーツ性能のすべてを見事に実現したと、フェラーリは説明する。

「スポーツ性能と多用途性に加えて、日常的にフェラーリを愉しみたい方に向けた、まったく新しいフェラーリのGTコンセプトを導入したモデル」とフェラーリが自認するGTCルッソTは、同時に「跳ね馬史上初となるV8ターボエンジンを搭載した4シーターモデル」との由である。

しかし「トゥーリング・スーペルレッジェーラ」や「ヴィニャーレ」などの名門カロッツェリアが、ごく少数生産のボディを架装していたビスポーク時代(1940‐50年代)のモデル、あるいは一部のレーシングカーを除けば、同じボディに異なる気筒数/排気量のエンジンを搭載したモデルを製作するというのも、フェラーリ史上ではおそらく初のこと。

しかも、元々は伝統的なV12エンジンとともに開発されたモデルに、エントリーモデルとしてV8エンジンを搭載するというのは、これまで孤高のスタンスを保ってきたフェラーリとすれば、かなり思い切った方策と言えるだろう。“民主的になったフェラーリ”をマーケットがどう受け止めるのか、今後の趨勢に注目したいところである。それでもフェラーリが孤高の存在であることに変わりはないが。

(文・武田公実)

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