ヒラリー「健康問題」が選挙に影響しない理由 大統領選では透明性より大事なことがある
つまり、メディアがクリントンの健康問題を取り上げるのは、「透明性」の名の下にクリントンを批判することによって、報道のバランスを保っている、と見せ付けようとしているからにほかならない。
さて、今回の件が選挙結果に影響を与えることはあるだろうか。現時点では、その可能性は限りなく低い。クリントン支持者たちが、彼女の健康問題や透明性を理由に、トランプ氏に寝返ることはないからだ。同様に、トランプ支持者たちが、そう簡単にクリントン支持者に変わることもありえない。なぜなら、医療保険や外交、女性の権利から銃規制に至るまで候補者2人の政策があまりにも違うため、ちょっとやそっとのことで自分が支持する候補者からは離れられないからだ。
候補者の健康状態はそれほど重要ではない
過去に米国の有権者が大統領を決める際、候補者が大統領の仕事をするのに身体的、あるいは健康面で適しているか、ということに基づいて投票を行った、あるいは、しようとしていた、という事実は見当たらない。それよりは候補者の精神的成熟度や経験、あるいは性分が大統領に課された仕事に適しているかどうか、のほうがずっと重視されてきた。だからこそ、多くの有権者だけでなく、著名な共和党国家安全の専門家たちまでもがトランプに対して大きな懸念を抱いているのである。
足元の支持率を見ていると、大統領選は非常に接戦になっている。これまでの大統領選を見ても、国全体の投票においてはどちらかが大差をつけて勝つことはない。しかし、米国の大統領選は、一般投票によって選ばれる538人の「大統領選挙人」の投票で、過半数(270人)以上を獲得して初めて勝つことができる仕組みになっている。
選挙人は、各州の人口などに応じて一定数が割り当てられており、クリントンがカリフォルニア州の55人を獲得するのはほぼ間違いない(ほとんどの州では一般投票で首位になった候補がその州の選挙人をすべて獲得できる)。一方、トランプがテキサス州の38人の選挙人を勝ち取るのも同じくらい確実だ。今のところ、選挙のデータ分析を行っている専門家によると、過去4回ないし5回の選挙で民主党候補を支持した州では、クリントンが大きなリードを保っているようだ。
ゆえに今年の選挙は、フロリダ州やペンシルベニア州、オハイオ州、ミシガン州、ウィスコンシン州といった、大統領選のたびに勝利政党が変わる「スイング・ステート」が主戦場となることは間違いない。そして、こうした州の候補者たちが重視するのは当たり前だが、雇用や経済、国家安全や候補者の性格などであり、間違っても候補者の健康や「透明性」ではないのである。
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