「シン・ゴジラ」も採用、"4Dシアター"の凄み 振動や香りも、アトラクション化進む映画館

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ブレて見えるのは実際に激しく椅子が揺れているためだ(撮影:梅谷秀司)

4Dシアターの積極活用も進んでおり、9月には4Dシアターでの映画鑑賞を目的に制作した映画『戦車ライド』が公開されることも決定している。『戦車ライド』はMX4Dの機能を存分に体感できるよう、戦車の走行シーンや榴弾砲に撃たれる衝撃など、観客は戦車に同乗しているような感覚が映画鑑賞中ずっと続く。11月には4Dを楽しむために制作されたショートムービーアニメーション作品『カゲロウデイズ-in a days-』の公開も予定されており、「アトラクション型4D上映」という新分野を切り開こうとしている。

4Dシアターによる映画館のアトラクション化が進む一方で、床から天井、左右の壁にまで広がる大型スクリーンで明るく鮮明な映像と高音質な音を再現しているIMAXシアターは、いわば「ミュージアム」的な映画鑑賞スタイルを提供し、特に都市部を中心にファンが拡大している。

「スター・ウォーズシリーズやアニメ作品のように何度見ても楽しめる映画は、2D、IMAX、4Dシアターとフォーマットを変えて何度でも見る。鑑賞スタイルが多様化したことで、客単価上昇だけでなく、リピータ-獲得にもつながっている」と、109シネマズを運営する東急レクリエーション宣伝担当者は言う。過去に2Dで公開された作品が4Dの演出を加えることによって新たな価値を生み出す可能性もありそうだ。

追加料金は1000~1200円

4Dでの鑑賞は、一般料金に加えて1000~1200円の追加料金が必要になる。一般料金の割り引きがなければ、映画1本の鑑賞に3000円。それでも、「シン・ゴジラは、4Dシアターのチケットが2Dより先に売れていく」(東宝の浦井敏之常務取締役)。

同じく夏興行で公開中のアニメ映画「ONE PIECE FILM GOLD」は、4Dに加えて3Dの追加料金300~400円が必要になり「客単価上昇につながっている」と東映の山内敬氏はいう。どちらの作品も4Dシアターでの上映が興行収入に貢献しており、映画業界全体を見ても平均入場料金は2014年の1285円から2015年には1303円と上昇傾向にある。

「飽きられることなく、映画鑑賞の新ジャンルとして定着するかどうか、まだ様子見の段階」(映画会社関係者)ではあるが4D作品の年間公開本数は増加している。当面は映画業界に新しい風を吹き込んでくれそうだ。

中原 美絵子 フリーライター

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なかはら みえこ / Mieko Nakahara

金融業界を経て、2003年から2022年3月まで東洋経済新報社の契約記者として『会社四季報』『週刊東洋経済』『東洋経済オンライン』等で執筆、編集。契約記者中は、放送、広告、音楽、スポーツアパレル業界など担当。

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