「異次元の低金利」が定着する理由 市場動向を読む(債券・金利)
見落とされがちなもう一つの背景は、「イタリアショック」による欧州発リスクオフ・ムードの再燃である。きっかけは2月25日、反緊縮派の勢力伸張というイタリア総選挙の予想外の結果判明だった。
欧米市場ではにわかに、「イタリアも安定政権の樹立が難しくなった。財政構造改革路線が後退しかねない」との懸念が蔓延。安全資産とされる米独の国債市場に逃避資金が還流し、それまで上昇傾向だった利回りが急低下に転じた。同じく安全資産の一角に位置付けられてきた日本国債も再び買われるとの連想から、長期金利は米独の金利に追随する格好で下振れした。
国内債券市場では最近、長期金利が大幅な円安株高の進行に全く反応しないことから、「今後、上昇要因になり得るのは、米景気回復を映した米債安くらいしかない」との声が漏れていた。ところが、その米長期金利もリスクオフ再燃で上がりにくくなったのだとしたら、国内の金利先安観は、強まることはあっても弱まることはなさそうだ。
2003年の過去最低金利0.430%も視野に
このように、長期金利はすでに0.60%前後という9年8カ月ぶりの低水準に位置しているにもかかわらず、なお一段の低下余地が見込まれる状況になってきた。この先のメド値としては、一般に「0.550%」「0.500%」…といった0.050%(5ベーシス)ポイント刻みの心理的な節目があげられる。有力なチャートポイントは、もはや、くだんの2003年過去最低、0.430%しかない。
一方、筆者はこれまで、予想レンジの下限を「0.70%」としてきた。過去最低をつけた直後の債券バブル崩壊、という苦い記憶に根差した高値警戒感はそう簡単には払拭されないだろう、というのが最大の理由であった。
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