EU加盟国間の鉄道旅行は本当に便利なのか 6カ国の移動で見えたグローバルパスの利点

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イタリアを出発した列車は翌朝オーストリア国内を走行していた

このツアーの起点はイタリアのヴェネツィア。ここから夜行列車でオーストリアを抜け、ウィーン経由で最初の目的地であるハンガリーのショプロンへ向かう。イタリアもオーストリアも、EU加盟国でシェンゲン協定にも加盟しているから、国境審査はもちろんない。しかし寝台車に乗ると、すぐに客室乗務員がパスポートを回収しに来る。

慣れないと、「大事なパスポートを持っていかれるのでは…」と不安になるが、これは深夜の国境通過時に突然のパスポートチェックが行われた場合、寝ている乗客を起こさないで乗務員が審査の代行手続きをしてくれるサービスで、たとえシェンゲン協定に加盟していても、事件などが発生すればパスポートチェックが行われることもあるのだ。

ウィーン到着後、ローカル線を乗り継いでハンガリーのショプロンを目指す。国境線に存在した、かつての緩衝地帯と思しき草原を眺めながら、ローカル列車は何事もなく国境を通過していく。ほんの数十年前までは、国境には銃を構えた兵士が立ち、簡単に立ち入ることも難しかったハンガリーも、今やEUへ加盟し、もちろんシェンゲン協定にも加盟しており、乗車しているだけでは国境通過を実感できない。

導入国以外でもユーロが使える!

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「ビールはいかが?」チェコ鉄道の食堂車では、ユーロ/チェココルナの両方が通用する。国際列車では、少なくとも通過する国の通貨は使用できる

市内を散策していた時には気付かなかったのだが、夕食時に一つ心配事が出てきた。というのも、ハンガリーはワインの産地としても有名で、市内の酒場では一杯数十円程度の低価格でワインが飲める店もあるというが、ハンガリーはユーロ通貨を導入していないため、ハンガリーの通貨、フォリントへ両替する必要があるのだ。

高級店であればクレジットカードも使えるだろうが、一杯数十円のワインが飲めるような酒場でカードが使える可能性は非常に薄い。かといって、少額のためにフォリントへ両替するのも少し無駄だ。そこで一軒の酒場へ入り、店員へ確認をしたら、普通にユーロを受け付けてくれた。レートは良くないかもしれないが、ユーロ通貨を受け付けてくれるのは、短期滞在の旅行者にとってはありがたい。

翌日、ショプロンを後にした我々は、列車を乗り継いでチェコの保養地、マリーアンスケ・ラズニェへ向かう。チェコもシェンゲン協定に加盟しているので国境審査は不要、気が付けばチェコ国内を列車は走っていた。国際列車の食堂車では、クレジットカードが通用するほか、通過する各国の通貨が使用できる。チェコはやはりユーロを導入しておらず、通貨はチェココルナとなっているが、そのどちらでも支払い可能だ。

マリーアンスケ・ラズニェは、200年もの歴史がある温泉保養地で、英国王エドワード7世(在位1901~1910年)もわざわざ当地を訪れた。お土産物屋が立ち並ぶ町中のカフェで、当地名物の「温泉ワッフル(丸いウエハースのような生地にクリームが挟まっておりゴーフルに似ている)」を売っていた。せっかくなので食べてみようと思ったが、ここでも通貨が違うことにその場で気が付いた。

ハンガリーの時と同じように、店員へユーロ通貨を使えないか尋ねてみたら、あっさり「1枚50セント」との返答が。絶対とは言えないが、近隣諸国でもお店によってユーロ通貨を受け付けてくれるところもあることがわかる。

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