ベルルスコーニの逆襲、「欧州危機」再燃か 第一生命経済研究所 主席エコノミスト 田中理氏に聞く

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過去3回首相を務めたシルビオ・ベルルスコーニ氏。総選挙で、氏の率いる中道右派連合が躍進を果たした(写真:Getty Images)

25日のイタリア総選挙の結果を受けて、欧州債務危機が再燃する懸念が高まっている。

下院ではピエルルイジ・ベルサニ氏が率いる民主党などの中道左派連合(モンティ路線を引き継ぐ)が最多票を獲得し、ボーナス議席が与えられるという規定に助けられて、過半数の議席を確保した。

しかし、上院では中道左派連合が最多議席を確保したものの、シルビオ・ベルルスコーニ氏が率いる中道右派連合が議席数の多い激戦州を制し、元コメディアンのベッペ・グリッロ氏が率いる「五つ星運動」も既成政党への批判で若者の支持を集めて躍進した結果、いずれの勢力も過半数を制することができなかった。

今後のイタリアの政権の行方について第一生命経済研究所主席エコノミストの田中理氏に聞いた。

――今後の予想される政治日程は?

落ち着きどころが決まるまでに、かなりの時間を要する。イタリアでは首相の任命に上下両院の信任が必要なので、両院で同一勢力が多数派を構成できないと、内閣が成立しない。連立協議を模索することになるが、今週中にまとまることはまずない。現在、議会は散会中であり、3月半ばの再開までに決めればよいと思っているフシもある。

ただ、市場は当然許さないだろうから、3月上旬まで協議するのではないか。民主党勢力とベルルスコーニ陣営が組むか、民主党勢力と「五つ星運動」が組むかしかないが、いずれも難しい。というのも、終盤でベルルスコーニ陣営も「五つ星運動」も勢力を伸ばしたので、再選挙を実施したほうが得策だと考えるからだ。再選挙となればさらに時間がかかる。

――安定した政権の樹立は可能なのか?

仮に、連立政権が誕生しても、意見が合わず短命に終わるだろうし、改革は後退する。再選挙を実施すると、ベルルスコーニ陣営か「五つ星運動」が躍進する可能性が高いので、金融市場には衝撃が走るだろう。ユーロ危機が再燃するリスクは高い。

――金融市場の反応をどうみるか。

現在のところ、イベントリスクの大きさの割には、ユーロ円相場はさほどの円高になっていない。円にとってはアベノミクスがアンカーになっているのかもしれない。まだ、消化不良の面もあるだろう。

イタリアの改革路線の後退は、ラホイ首相自身を含む与党の不正献金疑惑を抱えるスペイン、資金繰り機器を抱えるキプロスの情勢にも悪影響を及ぼす。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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