韓国が嫌う「稲田防衛相」という"劇薬"の効能 安倍改造内閣の目玉人事は吉と出るか
一方で稲田氏は自民党政調会長を経て、今回の改造で閣内に戻っている。「ポスト安倍のひとり」との注目が著しく、重要閣僚就任が囁かれていた。そればかりではない。「百人斬り訴訟」の原告側の弁護人として知られる稲田氏が防衛相に就任するというところがミソなのだ。
北朝鮮が8月3日に中距離弾道弾ミサイル「ノドン」と見られるミサイルを発射したのは、このような人事に触発されたのかもしれない。ミサイルは秋田県男鹿半島西側250km沖の日本の排他的経済水域内に落下したが、弾頭そのものが日本のEEZ内に落下したのは初めてだ。
8月3日の中央日報も、「過去に侵略戦争と植民地支配と関連して歴史認識議論を起こした代表的右派女性政治家」と稲田氏の防衛相起用を大きく報じている。
とりわけ韓国側が警戒を示すのは、稲田氏が2011年8月に新藤義孝元総務相や佐藤正久氏とともに韓国の鬱陵島を視察しようとし、韓国側から入国拒否された過去だ。
鬱陵島には竹島博物館があり、古図などが展示されている。中には竹島が韓国領であると推測しやすいように偽装されているものがあったため、彼らは調査に出向こうとしたのだ。
ところが、韓国当局が3人の日本の国会議員を案内したのは、厳重な二重ドアのある取り調べ室だった。さらには窓もない拘置所のようなところに連行しようとさえしたのである。これには自民党のみならず、当時の民主党内閣も韓国に激しく抗議したため、3人は強制送還され、鬱陵島視察は叶わなかった。後に稲田氏は「刺されるかもしないとの警告を受け、防刃服を購入した。韓国へ入国後は食事もとれなくなるかもしれないと思ったので、機内でカステラをバッグにしのばせた」と語っている。
"劇薬"で中国、韓国、北朝鮮を牽制?
強い信念を持った"劇薬"のような政治家だ。このような稲田氏が防衛相に就任すれば、歴史認識問題で日本を激しく批判する中国や韓国、北朝鮮へ大きな牽制となると思われる。
防衛相就任にあたって稲田氏が靖国参拝について「心の問題であって、行く・行かないは言うべきではない」と明確にせず、核武装についても「現時点で日本が核保有を検討すべきではない」と従来の持論を封印したのは、いたずらにこれらの国を刺激したくないためだろう。稲田氏が政治の“師”とする安倍首相も2013年12月には靖国神社を参拝したが、中韓やアメリカから批判が出たために、以降は自粛。代わりに春と秋の例大祭で真榊を奉納している。防衛相就任にあたり、稲田氏はこれを踏襲したと見るべきで、ポスト安倍にいっそう近くなったともいえる。
7月13日にはイギリスでテリーザ・メイ氏が首相に就任し、11月にはアメリカ初の女性大統領が誕生する可能性もある。そうした流れで考えれば、今回の内閣改造の最大の意味は、稲田氏の躍進とはいえまいか。
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