“経団連代表"の住友化学、借金返済に軸足 大型投資回収に遅れ、次期3カ年中計で立て直し
安全性を見るための負債資本倍率(D/Eレシオ)をみると12年3月時点で1.5倍程度。有利子負債が株主資本を上回る状況だ。化学大手の中でも財務基盤の脆弱性が指摘されている。
有利子負債は実質8000億円まで圧縮へ
住友化学もこれを認識しており、有利子負債を15年度に9000億円まで圧縮する計画だ。ただし、これにはサウジ計画の第2期工事(16年稼働)で投じる1000億円が含まれており、「実質は8000億円程度となる」(十倉社長)。過去10年で積極果敢に進めてきた投資を抑え、その果実の刈り取りを急いで収益基盤を立て直す。これこそが住友化学が今後、3年間で取り組む重要な経営課題となりそうだ。
収益面で、もっともカギを握るのはサウジ計画の軌道化だ。というのも、住友化学は次期中計の発表に先立つ2月1日、プラスチックなどの石油化学製品の基礎原料となるエチレンの国内自社生産をやめると発表している。千葉工場(千葉県市原市)で2015年9月までに、年産41.5万tの能力を持つエチレン製造設備を停止する。
現在、国内では計10社が各地のコンビナートで計15基のエチレン設備を運営する。これまでもエチレン設備を廃棄したり、共同運営に切り替えたりした例はあったが、日本の石化産業史においてエチレンの国内自社生産から事実上、手を引くのは住友化学が初めてとなる。海外勢との競争が激化する中で、国内で守ってきた砦をみずから崩して、競争力の強化に努める。
12年3月期に52%だった住友化学の海外売上高比率は「次期中計期間中に6割近くになる」(十倉社長)見通し。傷んだ財務基盤の立て直しを期し、退路を断ってグローバル化に一層舵を切る。その果実を得られなければ、“経団連代表”の名も色褪せる。住友化学は正念場を迎えている。
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