永守会長「ARMは3300億円でも買わない」 屈指のM&A名手がまさかの「暴露」

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それが、今第1四半期は10%で着地。新製品の投入や、この分野を担当する経営層の交代が奏功した。また、永守会長は前年同期比で12.4%減少した販管費についても強調した。残業を減らしていく「働き方改革」の効果が出たという。

残業時間の削減は、日本電産にとっては大きな意味を持つ。創業当初から、同社は人材や設備で大企業に勝てない中、「働く時間だけでも1番になろう」とハードワーキングを進めてきた。永守会長自身もかつては「元旦の午前中以外365日働く」と公言していた。だが、売上高が1兆円を超え、従業員数も9万6602人(うち約9割が外国人)と大企業へ成長する中で、試行錯誤してきたようだ。

「今期は非常にいい買い物ができそう」

いざ質疑応答にうつると、アナリストたちからまず飛び出したのはソフトバンクによる英ARM(半導体設計会社)買収の見方を問う質問だった。

永守会長が「社外取締役を務めているので、私もARM買収の議論の場にいた。孫さん(孫正義ソフトバンク社長)は30年~50年先を見て、3兆3000億円も出してARMを買収した。ただ、技術革新のスピードは速いので、私にそんな勇気はない。私なら3300億円でも買わないでしょうね」と答えると、会場からは笑いが起こった。

永守会長も数多くの企業買収を手掛けた名手として知られる。「われわれは50社近く買収してきて1社も失敗していない。『私、失敗しないので』というドラマ(ドクターX~外科医・大門未知子~)があるが、それと同じだ」と今期のM&Aについて自信を見せた。

昨年度は買収価格が高かったため、8件ほどのM&Aを見送り、その多くがいまだ買収されずに残っているという。「企業価値でいうと(現在は)昨年から30~40%価格が下がっている。昨年買えなかったものを含め、今期は非常によい買い物ができるのではないか」(永守会長)。

孫社長に負けまいと、永守会長も虎視眈々と買収案件を狙っている。日本電産にとっても、今年度は予想以上の成長を遂げる可能性がありそうだ。

東出 拓己 東洋経済 記者

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ひがしで たくみ / Takumi Higashide

半導体、電子部品業界を担当

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