ヴィレヴァン、伝説の1号店で「本を売る」執念 サブカルファンも脱帽の「隠し味」が満載

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イースト店、階段上からの眺めは開放感がある

名古屋市の東隣に位置する長久手市では、1993年に開店し、本店に次ぐ古さを誇るイースト店が営業を続けている。本店同様、創業者の菊地会長が自ら店づくりと運営を指揮した伝説の店舗だ。

入り口は大きな倉庫の2階にある。階段を昇って、2階から入り、店舗の大半を占める1階に降りる独特の造り。フロアに降りる際に、店内をジオラマのように一望できる開放感がある。

「階段を一段下りるごとに売り上げが1万円落ちる」と出版取次に反対された設計のこの店舗は、すぐに利益貢献する成功をおさめ、現在も安定した売り上げを計上する。

ダメな店は潰す…意外にシビアな経営スタイル

ヴィレヴァンは1986年創業以来、急成長を遂げてきた。2003年5月期の売上高は87億円、それが2015年5月期で363億円、連結(ヴィレッジヴァンガードコーポレーション)では460億円規模に成長した。不良在庫を圧縮した2013~2014年には最終赤字に陥ったものの、足元のヴィレヴァン事業の利益は回復歩調にある。

ただ、2~3年前の構造改革の中で、ファンが多かった店舗の閉鎖も続いた。2014年に閉店したPAPA店(名古屋市名東区)もそのひとつ。こちらも最寄りの駅から20分以上歩く不便な場所にあった。前述の菊地氏の著書『ヴィレッジ・ヴァンガードで休日を』で5章にわたり、1995年の開店までの様子を伝えた店舗だった。一部にファンの多かった東京・高田馬場店も、今年8月末での閉店が決定している。売上動向を厳しくチェックし、スクラップ&ビルドを積極的に進めるヴィレヴァンの意外にシビアな経営スタイルが透けて見える。

「名店だからと言って、いつまでも存続するというわけではない」との認識から、本店を中心とする伝説店舗を急ぎ訪れるサブカルファンは絶えない。「遊べる本屋」の総本山、その存在感は健在だ。

山内 哲夫 東洋経済 記者

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やまうち てつお / Tetsuo Yamauchi

SI、クラウドサービスなどの業界を担当。

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