祖業を捨てたブランド品店「LoveLove」 家電店撤退のセキド、産みの苦しみ

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セキドは昨年10月の家電全店閉店に当たって、家電部門で希望退職を実施(55人が応募)、特別加算金など8700万円を特損計上している。

家電店の店舗が入居していたショッピングセンターの貸主1社が破産したため、債権(敷金)の取り立て不能(もしくは遅延)の懸念が出ており、債権額(敷金)1.2億円の半額を第3四半期(12年9~11月期)に貸倒引当金計上した。通期では債権全額を貸倒引当金に計上する可能性もあり、その場合は最終赤字幅が拡大しそうだ。

家電店撤退で来期大幅減収だが利益は回復

家電店撤退の影響が一服する来14年2月期は、人員減に加え、間接部門の合理化などで計2億円の固定費削減を見込めそうだ。ショッピングセンター等へラブラブの新店を5店程度開業する計画もある。駅前立地でオリジナルブランド品を中心とする小型店舗も検討中であり、来期中の出店もありそうだ。

売り上げ面では家電店撤退のために大幅減収を免れない。ただ、ラブラブの既存店売上高が微減程度で推移したとしても、営業黒字は確保できるものと見られる。

また、既存顧客の深掘りのため、購入ブランド別などのクラスター分析の積極化も図る。顧客の嗜好に合わせ、バイヤー情報をいち早く個別にDM発送したり、リピート率の高い上顧客には店長から電話で新商品情報を伝えるなど、きめ細かいフォローで来店客を囲い込む。

家電はネット通販等に絞り、ファッション集中

セキドは量販事業の多角化ではもともと先駆者といえる。

家電販売の創業者である故・関戸千章相談役が米国を視察した際に、家電からファッション、スポーツ用品まで扱うパワーセンターを目の当たりにし、「日本にも必要な時代が来る」として多角化に乗り出した。

一時は社内に5事業部(家電、ファッション、ホームセンター、スポーツ、カー用品)が存在したが、そこから生き残ったのが、ファッション事業のラブラブだ。

今後、セキドは創業事業の家電販売はネット通販と一部外商に絞り込む。ただ、量販大手の調達力には及ばず、価格競争力と商品力の点で見劣りは否めない。ファッション事業に集中することで収益を安定させ、利益剰余金のマイナスを消し、捲土重来を期すというのが同社の当面の戦略だ。

山川 清弘 東洋経済『株式ウイークリー』編集長兼「会社四季報オンライン」副編集長

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やまかわ きよひろ / Kiyohiro Yamakawa

1967年、東京都生まれ。91年、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。東洋経済新報社に入社後、記者として放送、ゼネコン、銀行、コンビニ、旅行など担当。98~99年、英オックスフォード大学に留学(ロイター・フェロー)。『会社四季報プロ500』編集長、『会社四季報』副編集長、『週刊東洋経済プラス』編集長などを経て現職。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト。著書に『世界のメディア王 マードックの謎』(今井澂氏との共著、東洋経済新報社)、『ホテル御三家 帝国ホテル、オークラ、ニューオータニ』(幻冬舎新書)など。

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