法務省の市場化テストが頓挫した理由 入札不調で随意契約へ切り替え続出

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経費削減効果は4割、一方で残業代払わぬ企業も

 全国各地の法務局で入札不調が続発したことについて、市場化テストを推進している内閣府官民競争入札等監理委員会事務局は「所管官庁の法務省が原因を調査中」としたうえで、「全国各地でこれほど多くの入札が不調になる例はこれまでにない」(事務局担当者)と認めている。

一方、法務省民事局の担当者は、最初の入札で決まったのが53ブロックのうち11ブロックしかなかった事実を認めたものの、「(随意契約であれ競争入札に基づく契約であれ)結果的に多くの局で落札業者が決まったことから、適切な業者が適切な価格で契約を結んだと考えている」と東洋経済記者に説明している。だが、異常事態が続発していることは間違いない。

内閣府によれば、「民間事業者の創意工夫を活用することにより、国民のためにより良質かつ低廉な公共サービスを実現する」ことが市場化テストの目的とされている。

かつて登記簿の公開業務は、法務省の外郭団体である民事法務協会が一手に引き受けていた。だが、幹部の天下り問題や随意契約による業務の独占が批判され、市場化テストに委ねられた経緯がある。

そして、市場化テストによる競争入札の結果、大半の法務局の登記簿公開業務が民間企業の手にわたった。監理委員会によれば、競争入札による「経費削減効果」は従来の委託金額の4割に相当する48億円に達しているという。

だが、市場化テストは新たな問題も引き起こしている。民間企業に委託先が切り替わった際に、職員の賃金水準が大幅に下げられたうえ、それまであった一時金や昇給の仕組みも廃止された。

その後、落札した民間企業が職員の給料の一部を支払わないまま、事業継続を断念する事態が発生。1500人を上回る職員が一時、仕事を失った。社会保険料の過小納付など法令違反の事実も判明したものの、当該の企業が破産を申し立てたことで、いまだに是正されないままになっている。

フルタイムなのに時給700円台、生活が困窮する職員も

こうしたトラブルを踏まえて実施された今回の入札について法務省は、「悪質な業者が落札できないように実施要項を改正した。その結果として不法に安い価格での落札はできないものと考えている」(民事局担当者)としている。

そのうえで、落札企業が出てこない事態についても、「安値で応札できない仕組みにしたために、結果として入札不調が続いた」(同)と述べている。

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