連れ戻されて、実家で暮らすようになって5年が経った。「これ以上、酒を飲むと死ぬ」と診断されている。毎日、お酒の誘惑と格闘しながら、体調がいいときは家事手伝いをして、自由出勤を許されているソープランドに電話をする。そして出勤できる時間に、出勤する。
ソープランドでは1日働けば、2万円にはなる。実家暮らしで、家から出ないので、お金を使うのはお酒とタバコくらい。稼いだ2万円で1週間~10日間を過ごし、お金がなくなったらまた出勤する。そんな生活が5年間続いている。
「最初のDVでおかしくなってから、あまり自分を大切にするみたいな感覚はなくなった。だからソープで働くことは、何とも思っていないです。親にバレるのが怖いくらい。毎日、なんとか生きているだけ。キャバとかソープで知り合った友達も、みんな旦那とか彼氏に暴力ふるわれているし、結婚とか考えられない。親は“私たちが死んだら、あんたどうするの?”って言うけど、こんなになっちゃったし、もう仕方がない。なるようになるだけ、です」
米軍相手のデリヘルか、上京してキャバか
沖縄にもスカウトマンがいる。国際通りや松山に出かければ、細身で美人の彼女は声をかけられる。スカウトマンは女性たちの事情をよく聞く。琉球大学中退で簡単な英会話ができる彼女は、今、沖縄中部にある米軍専門のデリヘルで働くか、上京してキャバクラか風俗をしながら、ひとり暮らしすることを薦められている。嫌なことがあった沖縄を出て、環境を変えたほうがいいのでは?という提案だ。
「確かに、このまま自宅に引きこもっていても、何もないことはわかっている。環境を変えてイチからやり直すのもいいかな、とは思っています。大学2年までは、自分のことダメと思ったことは一瞬すらなかった。けど、“お前はダメだ、お前はダメだ、お前はダメだ、お前はダメだ、お前はダメだ”って殴られながら言われ続けて、1000回くらい同じことを言われたら、“私ダメだ、私ダメだ、私ダメだ”ってなる。洗脳されちゃう。本当にこんな、ただ生きているだけのダメな人間になっちゃった」
新垣さんはもう限界といった様子で、ビールを注文した。止めようかと思ったが、何も言わなかった。確かにグラスを持つ手が、少しだけ震えている。暴力と暴言によって、健康体の優秀な女性が本当に壊れてしまう。DVの恐ろしさを目の当たりにした。
「ひとりで東京に行くのは今の状態じゃ無理。米軍相手の店で働いて、段階的に違う景色の場所に行ければとは思う。だから、そろそろ引きこもりは卒業するかも」
新垣さんの諦めた表情は変わらなかったが、最後に少しだけ前向きなことを言ってくれたのが救いだった。
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