キンドルが成功するかどうかより、もっと問題なのは、スマホ時代になって、BL、TLものの売り上げが落ち始めたことだ。これには、いまBL、TL専門プロバイダは頭を抱えている。BL、TLがこのまま売れなくなると、いくら一般書の電子出版市場が伸びても、売り上げ減をカバーできず、日本の電子出版は頭打ちになる可能性がある。
こうした事態に、さらに追い打ちをかけるように、アップルの単体アプリによる電子出版市場も売り上げが落ち始めている。かつてなら1万ダウンロード行ったものが、数千ということがザラになってきた。それに伴い単価は下がり続け、今や85円という最低価格帯でないと売れなくなっている。
今、切実にキンドルが売れてほしいと思っているのは、電子書籍推進派の方々や先進ユーザーよりもむしろ、BL、TL専門プロバイダやアプリ制作業者、そして、それらにコンテンツを提供している作家たちだ。もちろん端末のキンドルが売れることも望ましいが、どの端末からもキンドルストアはアクセスできるから、早くキンドルストアが広まってほしいと願っている。
ここで問題になるのは、キンドルストアが、アップルのように審査が厳しいかどうかだ。
アマゾンはエロに厳しいのか?
アップルの審査は、エロ系コンテンツには特に厳しい。今までの経験から言うと、写真、イラスト、漫画は、日本基準でOKと思えてもほとんど審査に通らない。だから、配信業者はずっと悩んできた。その基準がどこにあるかわからず、とりあえずアップして審査待ちということがよくあった。アップルは、簡単に言うと、こう言っているだけだ。
「ウェブスターの辞書で定義されているポルノ素材を含むアプリはリジェクトされます」(著者訳)。
しかし、アマゾンには今のところこうした基準はない。また、コンテンツを審査しているかどうかも、よくわからない。アップされたものを見ると、過激なエロコンテンツもBL、TLもOKになっているからだ。
もし、アマゾンがエロに無関心なら、BL、TLのプロバイダにとっても、作家にとっても、読者にとっても大福音である。あるBL作家はこう言う。
「アマゾンはオンライン通販では、大人の玩具を売っています。これは、アマゾンの通販のドル箱商品の1つで、アマゾンは事実上、日本一の大人の玩具ストアだと言われています。ならば、エロの審査なんてほとんどしないでしょう。アマゾンが日本でキンドルストアをオープンして、いちばん活気づいているのが(個人出版ができる)キンドル・ダイレクトパブリッシング(KDP)ですが、ここで、エロコンテンツをアップして試してみようと思っているんです」
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