東海道新幹線の車窓の風物詩だった養鰻池。ところが、1970年代に入るとビニールハウスを使った養殖法が実用化され、昔ながらの露地池は徐々に姿を消していった。露地池はウナギがのびのびと育ち美味しくなる反面、温度と水質の管理が難しく、成魚に育てるにはビニールハウスの倍以上時間がかかるなど、生産効率が劣るからだ。わずかに残る露地池を使う業者も、水温が下がる冬はビニールハウスを使っている。
こうして、昔ながらの露地池は東海道新幹線の車窓から失われ、代わってビニールハウスが建ち並んだ。"露地池の跡地は多くが埋め立てられたが、地盤が軟弱なため用途が見つからず、空き地のまま放置されるケースが多かった。
そんな養鰻池の跡地を利用して、2010年代に急速に増えたのが、メガソーラーと呼ばれる大規模太陽光発電施設だ。
太陽光発電には、長い日照時間と広大な土地が必要だ。浜松市は今も全国で5本の指に入る年間日射量を誇る。地盤の問題も、軽量なソーラーパネルの設置には問題とならず、養鰻池の跡地は、メガソーラーにぴったりの条件を備えていた。
現在、浜名湖周辺では中部電力グループのシーテックと須山建設が浜松・浜名湖太陽光発電所を運営しており、ソフトバンクエナジーも三井物産と共同で年間発電量43メガワット(一般家庭1万5000世帯分に相当)に及ぶメガソーラー「ソフトバンク浜松中開ソーラーパーク」を建設中だ。
新幹線の車窓は生きている
東海道新幹線から見える養鰻池跡地でメガソーラー事業を行っているのは、地元浜松の不動産開発企業であるアサヒハウスグループ。数年前まで、広大な空き地が寂しく拡がっていた浜名湖周辺には、ここ数年で現代的な太陽光パネルがずらりと並んだ。新幹線の車窓は生きており、絶えず変化していくのである。
メガソーラーを過ぎると、新幹線は在来線と合流して浜名湖の弁天島を渡る。E席側には、のどかな浜名湖の水面が拡がり、海苔の養殖の様子も見える。当初の構想通りであれば、この養殖場の真上を高架橋がまたいでいた。浜名湖の景色は、今とは全く違ったものになっていただろう。
A席側は、在来線の向こうに海との接点、今切口に架かる浜名大橋が見える。こちらの水面には波があり、海に近いことが感じられるだろう。同じ浜名湖の景色でも、E席側とA席側で全く趣が異なるのが面白い。
E席側に浜名湖競艇場が見えると、浜名湖の車窓もそろそろ終わり。間もなく、東京~新大阪間の中間点である257.7km地点を通過する。
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