なぜ「酒の価格」に国が口出しをできるのか 安く売るための企業努力は無視?
「例えば、たばこの小売価格、薬の小売価格(薬価)、公衆浴場の料金などは、様々な公益的な必要性から例外的に法令などで販売価格が規制されています。しかし、そのような例外的事情がなければ、企業が販売する商品の価格は自由に決めることができるのが原則であり、酒の販売においても同じです」
では、どうして、酒の安売りが禁止できるのだろうか。
「どんな価格でも認められるというわけではないのです。独禁法上では、商品の過度な安売りを『不当廉売』として規制しています。これは例えば、企業が仕入価格を下回るような安さで商品を継続的に売ることで、ライバル企業の顧客を奪い、市場から不当に追い出す手段になり得るからです。
そして、過度な安売りをした企業は、ライバルを追い出した後で、従前よりも非常に高い価格で売るようになるかもしれない、といった懸念もあります」
独禁法ではなく、法改正で対処するのはなぜ?
「独禁法違反を取り締まっている公正取引委員会(公取委)は、酒の不当廉売に関しても調査しており、2カ月程度で迅速に調査した上で、違反につながるおそれがある場合には安売りをした企業に非公表の注意を行っています。公取委は、2014年度には635件の注意を行っています。
大規模スーパーでは、酒の安売りをすることによって、消費者が来店するきっかけをつくれば、酒以外の商品も購入してもらえる可能性があります。事業全体では赤字にならず、また、大規模スーパー間での顧客の奪い合いの対抗手段として行われることもあるのかもしれません。
しかし、酒をもっぱら販売している中小の小売店が不当に顧客を奪われることになると、独禁法上の不当廉売になる可能性もあります」
では、法改正ではなく、独禁法で取り締まればいいのでは?