日産ゴーン社長は「三菱パワー」に賭けた 提携効果実現には曲折も

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 5月22日、燃費偽装で窮地に陥った三菱自動車が、日産自動車のカルロス・ゴーン社長という救世主を得て再生に動き出す。提携の会見で握手するゴーン社長(左)と益子会長、横浜で12日撮影(2016年 ロイター/Thomas Peter)

[東京 22日 ロイター] - 燃費偽装で窮地に陥った三菱自動車<7211.T>が、日産自動車<7201.T>のカルロス・ゴーン社長という救世主を得て再生に動き出す。ゴーン氏は三菱グループとの協力も視野に東南アジアでの拡販、電気自動車、プラグインハイブリッド車、部材の共同購買など多くの分野で相乗効果を期待する。

しかし、不正を生んだ三菱自の改革の成否は未知数だ。三菱ブランドに賭け、世界販売1000万台の達成を狙うゴーン氏の決断には、なお多くの課題が待ち受ける。

災い転じて福となす

今回は前向きに動いてくれて良かった――。日産による34%出資を知った三菱グループ役員らは、ゴーン氏が三菱自に強い関心を持つようになっていたことに驚き、安堵した。日産は2011年に三菱自との折半出資で軽自動車の企画開発の合弁会社を設立したが、過去の両社間のやりとりを考えると、本体への資本参加などありえないと思っていたからだ。

2000年代前半、三菱自は2度にわたりリコール隠しを引き起こした。それを機に、当時の独ダイムラー・クライスラーは出資を引き上げ、三菱自は三菱重工業<7011.T>、三菱商事<8058.T>、三菱東京UFJ銀行(当時は東京三菱銀行)などが優先株を持つグループの管理下に置かれた。当時のゴーン氏には、グループから独り立ちできない三菱自を「心もとなく、手放しで安心できる相手と思えなかったのでは」と日産幹部は言う。

事実、日産はリコール隠しで経営危機に見舞われた三菱自への支援を拒否する。「当時は三菱自をどこかの自動車メーカーに引き取ってもらおうというのが最終目標だった」と、三菱グループ企業のある幹部は話す。だが、各社に断られ、「最後の頼みは日産だったが、その時も出資するまでに至らなかった」と振り返る。

「災い転じて福となす」。三菱自の燃費偽装問題が日産との資本提携に発展した経緯を、三菱商事のある幹部はこう表現する。三菱自は三菱ブランドを傷つける問題児だが、その経営が立ち行かなくなれば、商社ビジネスにとって、今後も拡大が期待できる自動車事業の重要な相手を失うことになりかねない。屋台骨だった資源事業が曲がり角を迎える中、商事には三菱自をつぶすにつぶせないという思いもあったという。

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