証券アナリストは、変革を求められている 「早耳情報」より「分析」が重要だ

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証券アナリストは、自らがカバーする企業の財務情報を分析し、投資家に提供するのが仕事だが、その際、企業を訪問し、CFO(最高財務責任者)やIR担当者らからのヒアリングも実施する。取材の過程で、近く発表される決算数字を「当てにいく」ことも多く、「こうした情報が実は一番投資家に喜ばれる」(外資系証券のアナリスト)のが実情だ。

アナリストの情報をもとに顧客投資家が活発に株の売買を行えば、仲介した証券会社には手数料が入る。関心は自ずと企業の重要な内部情報に向かい、短期売買を繰り返すヘッジファンドに食い込もうと躍起になる──という構図がある。

しかし、監視委の幹部は「アナリストの役割は大きく変わるべき」と指摘する。「マスコミと一緒になって『早耳情報』を追いかけるのではなく、膨大な公表資料を分析する業務に徹するべきだ」と主張する。

背景にあるのは、アナリストのカバーする企業が一部に偏っているとの問題意識だ。日本の上場企業は3000以上あるが、アナリストがカバーしている企業はごく一部。公表資料を丁寧に分析し、中長期的に成長しそうな企業を発掘すれば、さらに資本市場は厚みを増すと、監視委幹部はみている。

独自分析で生き残れるアナリストへ

金融庁は、さらに体制整備にも乗り出す。金融審議会(首相の諮問機関)の部会は13日、上場企業が特定の第三者に重要な内部情報を伝えることを禁ずる「フェア・ディスクロージャー・ルール」の導入に向けて「具体的に検討すべき」とする報告書をまとめた。金融庁のある幹部は、米国流のフェア・ディスクロージャー・ルールが模範になると話す。

米証券取引委員会(SEC)は2000年に規制を導入し、未公表の重要事実をアナリストに優先的に開示することを禁止した。「早耳情報」の取得競争から脱し、企業とアナリストのなれ合いを断つことが狙いの1つだ。

ルールが導入されれば、アナリストは公表資料を独自に分析し、その内容で競い合う時代に突入する。しかし、その能力を今のアナリスト達が持っているのかどうか。あるアナリストは、独自色の発揮は難しいと話し「自分の『仕事』はなくなってしまうのではないか」と頭を抱えている。

 

(和田崇彦 編集:田巻一彦)

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