地方を支配している「ヤンキーの虎」とは? 「マイルドヤンキー」を超えるやつらがいた

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ヤンキーの虎は、大きく二つに分けることができます。

一つは、地元の名士系です。地主や土建屋、パチンコ店などの二代目、三代目のような人たちで、地元の名門高校を出ています。大学を卒業してから東京でサラリーマンを経験する人もいますが、最終的には地元に戻って親の商売を引き継ぎつつ、旧態依然の経営から脱皮し上手に稼いでいる。そういう人たちです。

もう一つが、文字通りのヤンキー系です。高校は進学校ではなく、若い頃には少々の「やんちゃ」をやらかしてきた。販売系や飲食系の仕事に就いた後に独立、そこで成功を収めた、といったパターンです。統率力があり、かつてのヤンキーをど根性系パワフル社員に変身させ、まとめ上げているという強みもあります。

どちらの人たちも非常に勉強熱心で、船井総研や盛和塾のセミナーや勉強会などに熱心に足しげく通っています。そこでさらに地元の仲間を広げ、互いに商売の情報やアイデアをやりとりしている。仲間内での取引も少なくありません。そのため、彼らが稼いだお金は、絶えず地元を循環しています。大都市にお金が吸い込まれていきません。これは地方にとって、とても大事なことなのです。雇用だけでなく、そうした面でも地元への貢献度は大きいのです。

地方でリスクテイクできるのは「虎」だけ

それゆえ、これからの「地方創生」を考えていく場合、彼らの力をいかに上手く借りることができるかが重要な鍵なのです。

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ただ彼らはこれまで自分たちの地元で一つの層として認識されることもありませんでしたし、地方経済の中で正当な評価を受けて来ませんでした。地方では、県庁、地銀、電力会社、地方新聞などに勤務する人々がエリートで、彼らは「虎」たちを“格下”と見てきたのです。

しかし、このエリートたちはリスクを取ることが嫌いな人たちなのです。そもそも、地方の名門高校を卒業し地元の国立大学を出たり、東京あたりの私大を卒業したりして地元に戻ってきた人たちが多く、常にリスクの少ない選択をしてきた人たちです。

その彼らが、地方の意思決定集団を形成しています。人口減少社会の中で彼らが選択するのは、「減り続けるパイを、みんなが少しずつ我慢しながら分け合いましょう」という生き方でしょう。

それに対して、「ヤンキーの虎」たちは地方経済の中でリスクテイクできる唯一の存在です。徐々に衰退していく地方の中で起爆剤になり得るのは彼らしかいないのです。

地方を活性化させるためには、彼らにフルに活躍してもらうしかありません。彼らを上手く巻き込むことがでなければ、地方創生は成功しません。東洋経済オンラインの読者の皆さんも、まずは身の回りにいる「虎」に注目してほしいのです。そして彼らの存在に敬意を払ってください。そうすれば、疲弊しきっていたように見えた地元が、少し違った形に見えてくるはずです。

藤野 英人 投資家。レオス・キャピタルワークス代表取締役会長兼社長CEO&CIO

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ふじの ひでと / Hideto Fujino

1966年富山県生まれ。国内・外資大手投資運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年に独立しレオス・キャピタルワークス株式会社を創業。とくに中小企業株および成長株の運用経験が長い。「お金」や「投資」を通して、株式会社や日本社会、世界経済のあるべき姿を模索し続けている。教育にも注力しており、東京理科大学上席特任教示、叡啓大学客員教授、淑徳大学地域創生学部客員教授も務める。著書に『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)ほか多数。

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