訪日の超富裕層は一体、何を求めているのか ヒントは12万ドルの世界一周ツアーにある

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そのいい例がある。昨年、中国人の億万長者Lin Jinyuan氏は、従業員6400名を引き連れてパリとコートダジュールを訪れ、パリ市内の140軒のホテルとニース、カンヌとモナコのホテル4760室を借りて、自分の会社の設立20周年を祝った。パリからニースへの移動には147台のバスを手配し、ギネスレコードとしてヒューマンチェーン(大勢の人が手をつないで人垣を築くこと)ならぬ“バスチェーン”記録に登録しさえした。このLin氏一行の“爆遊”によるフランスへの経済効果は、なんと3300万ユーロ(約44億円)に達したそうだ。これはまさしく自己顕示的消費そのものである。

では、Lin氏さまご一行を、日本はどうもてなすのだろうか? フランスにはパリやニース、カンヌがあり、そのとなりにモンテカルロがあるとすれば、日本には東京、箱根、富士山、京都、大阪があり、北海道のスキー・リゾートも常夏の沖縄もある。日本の場合はアジアの富裕層が中心だから、かれらにこうした日本の文化的、歴史的資産を活用してどんな体験価値を提供できるか、ということが問題になる。

富裕者層が求めることを知らなければならない

しかし、多くの観光地は、点の訴求である景勝地、歴史的資産、文化施設、グルメ、高級ホテルなどのリスティング以上のことはなかなかできないでいる。訪れた観光客に対して、さまざまな旅行体験価値をシームレスに継続させて提供するプログラムやノウハウに乏しいのが現状だ。しかし、そうしたプログラムを提供するには、今日の富裕者層が求めていることを知らなければならない。そのヒントになる例がここにある。

それは、24日間世界一周を12万ドルで提案するフォーシーズンズ・ホテルによるパーソナルなプライベート・ジェット・ツアーである。もっとも際だった特徴は、ふつうなら生じる“待ち”の時間をすべて徹底的にカットするサービスにある。スタッフは、読みかけの本にブックマークのしおりすら挟んでくれるし、いつでも気を利かせてシャンペンやコーヒー、チョコレートやローカルのスナックなどなどを持ってきてくれる。プライベート・ジェットを使うから空港での混雑にも遭遇しない。

目的地や経路にしても、イスタンブールからサンクトペテルブルクに向かったあとにはマラケシュ、そしてニューヨークへと、自由に選ぶことができる。待ち時間なしにさまざまな体験を、シームレスにつなぐことができるのだ。荷物だって夜、ドアの外に出しておきさえすれば、次の国に到着したときには、その国の宿に届いている。出国および入国の手続きもスタッフがすべて整えてくれて、サインするだけである。ジェットに乗り込むときは機体のタラップに高級車をつけるし、降機すれば、むろんハイヤーが迎えに出ている。

そして、到着した国では、スタッフが現地でお土産を買える分の現地の通貨が入った封筒を手渡してくれるし、通常は長時間並ばなければ入れない美術館にも、誰もいない時間帯に入ることができたりする。また、ロシアの宮殿ではバレエとオペラを鑑賞しながらディナーをエンジョイでき、万里の長城の上にテーブルセッティングして饗宴に興じることもできるのである。1日で3大陸を訪れることも不可能ではないし、毎朝、いろいろなオプションから好きな目的地を自由に選定することができる。ちょっとつかれたから中休みにモルディブのプライベートビーチでなにもせずに過ごそうと思ったら、すぐにでもそれが実現できる。

というようなことをヒントにして、日本にやってくる富裕層向けのサービスを考えるとしたら、どんなことができるだろうか。それが私の提案である。

(Text: Sy Chen )

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