緊迫!シャープ “切り札”IGZO液晶に黄信号 矛盾するオンリーワン戦略
オンリーワンが「ロンリー」ワンに
悩みの種だった堺工場(大型液晶)を鴻海(ホンハイ)精密工業に事実上譲渡した今、シャープ経営陣は中小型液晶事業の“自力再生”にかけている。
自信の源は、「IGZO(イグゾー)液晶」だ。高精細でありながら電池が長もちするIGZOを量産できるのは、世界中でシャープの亀山第2工場しかない。このオンリーワンデバイスをアップルなどのヒット商品に搭載できれば、液晶事業での起死回生が図れるというわけだ。
アイパッドの生産調整で亀山第2の稼働率は一時、3割に落ち込んだが、奥田隆司社長は「成長ドライバー。(堺工場のような)切り離しはありえない」と言い切る。
鴻海はIGZOの技術供与を望んでいるが、シャープが応じる気配はない。9月末、シャープに3600億円もの追加融資を決めた銀行も、IGZOをはじめとするシャープの技術力について理解を示している。
だがここに来て、IGZOの真価が大きく問われている。
今、シャープブランドの商品にIGZOを搭載したところで爆発的には売れない。つまりIGZOの安定的な量産には有力な外販先の確保が欠かせないが、それがうまくいっていないのだ。
今年の春ごろまで、シャープは、「年末商戦の目玉であるウルトラブックにIGZOが採用されていく」(幹部)と意気込んでいた。実際、ヒューレット・パッカードやデルなどに猛烈に営業をかけた。にもかかわらず、大口受注は入らなかった。任天堂のゲーム機「ニンテンドー3DSLL」にも提案したが、「任天堂はコスト増につながる過剰スペックを望まなかった」(関係者)という。