スズキが「軽」以外の車種に本腰を入れる理由 「登録車10万台作戦」の勝算はいかに

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車格も似ているので、筆者がバレーノのライバルと考えている、ヒュンダイ「エリートi20」(インド国内で)

ただし、気になるのはスズキの国内販売ネットワークだ。筆者の居住地域周辺で改めてスズキ系ディーラーをネット検索してみると、拠点自体が意外なほど少なかっただけでなく、所在地の偏りが顕著で、販売拠点空白地域が目立っていた。あるスズキの販売店で聞くと、そのお店から結構遠いところから新車を見にやってくるお客も目立つそうだ。

接客接遇姿勢はバラつき大きい

実際店舗を訪れてみると、全体的には目だって問題は見当たらないのだが、セールスマン個々の接客接遇姿勢のバラつきの大きさも目立っていた。あるスズキ系ディーラーでは、店内は定期点検で訪れた既納客で商談テーブルが満席となっており、子どもの遊ぶスペースのベンチで商談したこともある。

点検での訪店客が多いか少ないかなどは、メカニックに聞けば予約が入っているのだから確認することができる。商談で訪れたお客用に商談テーブルのひとつを“予約席”として空けておくなどのちょっとした気配りがセールスマンにできていればCSレベルもぐっとあがっていただろう。

商談テーブルでそのまま見積書の計算やプリントアウトができる店舗とできない店舗があるなど、同じスズキの看板を掲げているのに、店舗運営がかなり異なるのは、現場に裁量範囲を広く持たせているともいえるが、やはりメーカーがファミリーレストランのように全国均一のサービスが提供できる店舗運営をある程度指導していかなければ、「やっぱりトヨタ、日産、ホンダのほうが……」と考える消費者も少なくないはずである。

アメリカの話になるが南カリフォルニアで新車販売に携わっている知人に「どんなに魅力的で優れた新車があっても、低金利ローンなどのセールスプロモーションや店舗展開がしっかりしていないと、売れるものも売れないですよ」と言われたことがある。

もしスズキが登録車販売強化に際して、完成度が高く、それでいて割安感も高いモデルをどんどん投入していけばそれでいい、と考えているのならば、それは登録車販売目標10万台達成の大きな足かせになっていくだろう。

小林 敦志 フリー編集記者

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こばやし あつし / Atsushi Kobayashi

某メーカー系ディーラーのセールスマンを経て、新車購入情報誌の編集部に入る。その後同誌の編集長を経て、現在はフリー編集者。

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