スズキが「軽」以外の車種に本腰を入れる理由 「登録車10万台作戦」の勝算はいかに

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今年2月に開催されたデリー・オート・エキスポでの、スズキのプレスカンファレンスでは、「BALENO FOR JAPAN」とステージのモニターに映し出されると喚声が沸き起こった
スズキは2015年からインド国内において、バレーノとSX4(日本名SX4 Sクロス)を専売する上級販売店“NEXA”店を展開し、バレーノを上級コンパクトカーとしてアピールしている(デリー市内)

そんなバレーノもイグニス同様に割安な価格設定は注目に値する。ディスチャージヘッドランプや自動ブレーキなどが標準装備となる1.2LのXTグレードで本革シートなどのセットオプション装着車を選び、シミュレーションしてみると諸経費込みで約193万円。ディーラーオプションのカーナビなどをつけても220万円ほどで収まる。

 スズキはインドの現地子会社であるマルチ・スズキにおいて約40%という圧倒的なトップシェアを誇る存在。バレーノはそのうちインドの富裕層から好評価を得ている車種だ。

インドでは所得が高くてもコンパクトな車に乗り続ける傾向があるという。インドでは首都のデリー市内であっても道路の陥没なども目立ち、車が走る環境は良くない。地元のひとに聞くと、「デリーは道が狭いから」などという答えも返ってきた。

そこで富裕層にしっかり評価され、トップシェアを保ち続けるには単に日本ブランドというだけでは無理で、掛け値なしの品質の高さが必要だ。単にインドで生産した安い車ではないのがバレーノなのだ。 

2004年11月に世界戦略車としてフルモデルチェンジを行った2代目「スイフト」は、日本国内でも高い評価を受け、その後新規プラットフォームを採用し、2010年8月に登場した現行の3代目スイフトも引き続き好評価を得ている。

その間に「スズキの登録車は完成度が上がった」という話も拡散を続け、クルマ通だけでなく、より多くの自動車ユーザーにアピールできるソリオがマイルドハイブリッドという新たな武器を携えてデビューしたことで、いよいよここへきて本格的に実を結び始めたといえるのが現状といえよう。

現行スイフトはモデル末期ということもあり、販売台数の落ち込みが目立つ

ソリオの販売は今後、多少勢いが弱まると考えても今年の販売台数は4万台前後が想定される。イグニスの月販目標台数は1500台なので、ざっと年間1万8000台といったところか。

今年後半にはスイフトのフルモデルチェンジが予定されている。新しいプラットフォームの採用に加え軽量化を実現すると見込まれ、マイルドハイブリッドや自動ブレーキ装着車も設定されるだろう。となれば、登録車販売台数の上乗せに貢献するのはほぼ確実。中長期的にはスズキの登録車販売10万台という目標の達成が見えてくる。

顧客満足度の向上を目指9すべき

ただ、死角がないわけでもない。まずは競合環境だ。4月11日にはトヨタ「パッソ」(ダイハツ名「ブーン」がフルモデルチェンジ。日産も「ノート」の大規模マイナーチェンジを今後予定しており、2016年後半にはダイハツ/トヨタ版がソリオ対抗モデルを登場すると予想されている。新陳代謝(新規投入モデルやフルモデルチェンジ、マイナーチェンジ)が進むことで、いままで軽自動車と比べてやや見劣りを見せていた登録コンパクトカーの魅力が底上げされ、2016年は今後販売状況が活性化していくことが予測できる。

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