西武が建築家に「斬新デザイン」を頼むワケ 妹島和世や隈研吾、車両の内外装に続々登場

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2人の有名建築家が手がける特急と観光列車だけでなく、通勤電車でも西武はユニークな車両を投入する。2017年に登場する新型車両40000系だ。

片側4つドアの一般的な通勤電車の構造だが、先頭車の一部分は車いすやベビーカー利用者が利用しやすい広いスペースの「パートナーゾーン」とし、窓も大きくして子どもが車窓風景を楽しめるようにする。また、座席も横長のロングシートと2人がけのクロスシートの両方に転換できるシートを一部に導入する。

ロングシートとクロスシートを転換できる車両は、今月16日に京王電鉄も導入を発表し、同社初となる座席指定列車の運行計画とともに大きな話題を呼んだ。西武を含め、各社が工夫を凝らした車両の導入を相次いで表明しているのは、首都圏の通勤鉄道沿線でも少子高齢化・人口減少の傾向が本格的に見えてきたためだ。

鉄道自体の魅力アップで誘客

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西武の混雑率は首都圏の平均より低い(写真:tarousite/PIXTA)

西武の輸送人員は1991年度の6億7421万人をピークに減少し、2014年度は6億2850万人となった。近年は一時期より微増の傾向が見られるが、沿線では人口減少の兆しも見え始めている。

混雑率もかつてより低下し、2014年度の数値は最も混み合う朝の池袋線・椎名町~池袋間で157%。混雑は続いているものの、首都圏の平均である165%よりは低い。

同社は昭和30年代に池袋線で、私鉄では初の10両編成を走らせるなど、高度成長期には輸送力重視の流れを先導した。だが、輸送量が増え続けた時代は去り、今後はいかに沿線に人をひきつけるかが問われる「路線間競争の時代」が本格的に到来する。そのためには、沿線の魅力はもちろんのこと、鉄道自体の魅力の向上も欠かせないポイントだ。

2人の建築家が手がける、「乗ること自体が目的となる」観光電車と新型特急という2つのフラッグシップ・トレイン、そして新たな試みを取り入れた通勤電車は、鉄道の魅力アップに向けた西武からの一つの答えといえる。新型特急が沿線の風景に馴染むころ、その車体に映し出される沿線の姿はどのようになっているだろうか。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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