旭テック子会社倒産の「なぜ」と「これから」--入交昭一郎社長に聞く

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--であれば、業界全体がもっとEVに前向きになっていいように思うが。

プラグインハイブリッドには可能性がある。基本はEVだが、小さなエンジンを積むプラグインハイブリッド。だが、どでかいバッテリーとエンジンを載せるのだから、一番コストが高くつく。「軽」をベースにした三菱自動車のEVでさえ、電池の価格が全体の価格の半分を占めると言われている。一種の妥協ではあるが、今の状況ではハイブリッドしかないだろう。

--しかし、欧州ではハイブリッドはそれほど評価されていない。

ハイブリッドは市街地走行に向いているが、高速走行ではそれほどメリットが出ない。だから、欧州、とりわけアウトバーンを走るドイツでは評価されない。米国は(市街地走行の多い)日本と欧州のちょうど中間で、迷っている。ただ、新しい技術が売れるかどうかは技術的な評価だけではない。ムードやお客のマインドがある。テレビがブラウン管からフラットパネルに移るとき、ソニーは(ブラウン管の)トリニトロンに拘った。「入交さん、見てくれ。どう見てもトリニトロンの画像の方がきれい。液晶もプラズマも偽物だ」と。

が、世の中がいったん薄い方がいいとなったら、もう誰もブラウン管を買わない。今、ハイブリッドがブーム。みんなでその波に乗ればいい。乗らなきゃダメ。実は2002年にデルファイがハイブリッドの試作車を作った。いいクルマだったが、普通車に比べ100万円高くなるという理由で開発継続を断念した。社外役員だった私はフラットパネルの例を引き、「いったん世の中が変わると、抵抗できない。継続すべき」と主張したが、通らなかった。そこが、技術開発の難しいところだ。

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(撮影:梅谷秀司)

梅沢 正邦 経済ジャーナリスト

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うめざわ まさくに / Masakuni Umezawa

1949年生まれ。1971年東京大学経済学部卒業。東洋経済新報社に入社し、編集局記者として流通業、プラント・造船・航空機、通信・エレクトロニクス、商社などを担当。『金融ビジネス』編集長、『週刊東洋経済』副編集長を経て、2001年論説委員長。2009年退社し現在に至る。著書に『カリスマたちは上機嫌――日本を変える13人の起業家』(東洋経済新報社、2001年)、『失敗するから人生だ。』(東洋経済新報社、2013年)。

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