「ノー」と言えないリーダーは信用されない

大物不在の時代にあえて火中の栗を拾おう

田中氏はそうやって種を撒き、さらに骨太な人間関係の構築に踏み込むことに天賦の才があった。それは石原慎太郎氏が近著『天才』で彼を賞賛するところでもあるだろう。ソニー創業者の盛田昭夫氏もパソコンに6000人ものデータベースを構築し、本人ばかりか奥さんや子どもの誕生日にもメッセージやちょっとした祝いの品を贈るなど、人心掌握に長けていた。もともとサービス精神旺盛な人柄で、ほかの経営者が真似しようにもなかなか簡単には真似できない、厚みのある人間関係を構築していた。

最近のリーダー論の背後にある大物到来願望

最近、またリーダー論ブーム再燃の兆しだが、みんな田中氏や盛田氏のような大きなリーダーシップを懐かしく思っているせいだろう。当時は社会に勢いもあったが、今はそうした大物はどんな分野からも生まれにくくなっている。特にスケールダウンしているのが政治家だ。不倫を週刊誌にすっぱ抜かれて醜態を晒した宮崎謙介氏などは典型だろう。

平和な世には巨大なリーダーは現れない。『海賊と呼ばれた男』の出光佐三氏は戦後の日本を憂い、海外の石油メジャーに一切屈しなかった。よく命を取られなかったとすら思うが、それだけ当時の日本に危機意識を持っていたからだ。

そして、果たして今の日本が天下泰平と言えるだろうか? むしろ、それこそTPPや少子高齢化など内憂外患の種は尽きず、明治維新、戦後に次ぐ国家存亡の危機を迎えているのではないか?

社長3代にまたがる粉飾決算問題で揺れる東芝だが、同社も以前は経団連会長も務めた石坂泰三氏や土光敏夫氏といった名経営者を輩出してきた。土光氏は我欲を超え、会社ひいては社会全体を見通す経営を行い、私生活では清貧を通した。そんな偉人と較べてしまうのも酷だろうが、東芝のような名門でも、今や小物がリーダーの座に就き、会社のためと思っては、悪びれずにごまかしを重ねてしまう。どうしてそんなカルチャーになったのか、不思議に思うくらいだ。

出る杭は上からも下からも叩かれる

こうしたスキャンダルの連発から思うのは、今は「リーダー受難の時代」ということだ。どうしても短期的な成果を求められ、長期的な視座が持てない。

仮にそれがあっても、実現するまで待ってはもらえず、つい目先の利潤を追求し、目標値に達しなければ、数字を操作してしまう。東芝のここ何代かの社長はまさにサラリーマンに過ぎず、真のリーダーたりえなかった。リーダーの座に就くと強権発動するのも、組織をしっかり作れていないからだ。勇み足をしても、諌言してくれるフォロワーを育てていられたら、ああまで膿みは溜まらなかったろう。

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