オラクルは"クラウド王者"アマゾンに勝つか ナンバーワン戦略を掲げる杉原社長を直撃

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――クラウドでは、オンプレミスでのデータベースソフト事業のような高い利益率を維持できないとの見方もある。

そうは考えていない。たとえばセールスフォースは、セールスオートメーションなどPaas(プラットフォームのクラウド)中心のクラウド事業を展開しているが、このベースとなっているのはオラクルの技術だ。

オラクルは自社技術でクラウドを展開していることに加え、クラウドはストックビジネスなので、継続的にお客様にお使いいただくことでコストをかけずに売り上げが上がるため、利益率は高くなる。

米オラクルCFOのサフラ・キャッツによると、2016年度のクラウド事業のマージンは40%~60%となる見込みだ。その後、2年程度で80%まで向上させるという。クラウド比率が増えたからといって、今より利益率が落ちるということはないとみている。

アマゾンに勝てるのか?

――「クラウドNo.1」を実現する上で、圧倒的な存在となっているアマゾンのAWS(アマゾン ウェブ サービス)からトップシェアを奪うことは難しいのでは?

トップになれない分野もあるかもしれないが、重要な分野ではトップに立ち、総合的に「エンタープライズ・クラウドと言えばオラクル」と呼ばれるようになる。

すぎはら・ひろしげ●1960年12月生まれ。EMCジャパン、シスコシステムズ、日本ヒューレットパッカードなどを経て、13年10月米オラクル シニア・バイスプレジデントグローバル事業統括に就任。14年4月より現職。

皆さん「AWSはすごい」とおっしゃるが、日本においてAWSがどれだけの売り上げがあるのかは公表されていない。

AWSはクラウドの開拓者としてリスペクトしているが、同社がIaas(インフラのクラウド)で大きなシェアがあると言っても、調査会社などの予測値しかない。クラウドの性格上、サーバーなどハードのように「何台売れた」というような単純な指標ではシェアを測ることができないという難しさもある。

また、われわれは、AWSの顧客の多くにオラクルデータベースを使っていただいているという点で、共存共栄していけるとも考えている。

会社にはそれぞれの強みがある。企業向けのITサービスのどの部分をどのプレイヤーが担うのかは、これからが見どころだ。いずれにせよ、オンプレミスのプレイヤーがクラウドに既存の技術を転用していき、同時にクラウド専業のプロバイダーが活躍することが、日本におけるクラウド市場を育てるという意味で重要だと考えている。

                         (撮影:梅谷秀司)

島 大輔 『会社四季報プロ500』編集長

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しま だいすけ / Daisuke Shima

慶応義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程修了。総合電機メーカー、生活実用系出版社に勤務後、2006年に東洋経済新報社に入社。書籍編集部、『週刊東洋経済』編集部、会社四季報オンライン編集部を経て2017年10月から『会社四季報』編集部に所属。2021年4月より『会社四季報プロ500』編集長。

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