迷走する地方分権改革、霞が関も自治体も抵抗、主役不在の不毛な戦い

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 国と地方の最終的な歳出額の割合は、大まかに言って2対3。ところが、国税と地方税の税収は3対2と逆になっている。権限や仕事を地方に移すなら、税収割合も少なくとも1対1以上にすべきだ。

住民が主役と考えるなら、自治体に税源を移すと同時に、税率も自由に変えられるようにするのが望ましい。住民が求める行政サービスの水準によって、必要な税収は異なるからだ。高い行政サービスを求めるなら税金は高くなるし、逆なら低くなる。現状でも、税金によっては自治体が税率を変えるのは可能だが、標準税率よりも低くする場合には、地方債の起債や交付税の配分において不利になるなど、国から“ペナルティ”が科されている。

現在、中心的な地方税は都道府県では法人事業税、市町村では固定資産税となっている。このうち法人事業税は地域によって税収の偏在性が大きいので、地方への税源移譲に際しては、偏在性の小さい消費税が候補になるだろう。ただ、消費税では、自治体ごとに税率を自由に変えるのは難しいため、個人所得課税の移譲(国税の所得税を減らして地方税の住民税を拡充)も組み合わせるといった措置が必要になる。

自治省(現総務省)出身で前鳥取県知事の片山善博・慶応義塾大学教授は、「本当の地方分権とは、行政サービスに関して住民に判断権を持たせることだ。受益と負担の水準を住民投票で住民に選ばせればいい。これまでは、住民ではなく霞が関、特に総務省が自治体をコントロールしてきた」と指摘する。

行政サービスの受益と負担の水準を住民に選ばせるには、自治体が条例をつくって住民投票を制度化するなどの方法が考えられる。最近ではこうした動きも芽生え始めている。たとえば、岩手県宮古市や鳥取県北栄町では、昨年「住民投票条例」を施行、住民が一定数以上の署名を集めれば、住民投票を請求できることがルール化された。

地方自治体に権限と税源を移し、住民に判断権を与えれば、自治体の責任は重くなり、政策面で失敗するケースが出てくるかもしれない。だが、補助金と交付税を通じて霞が関が地方自治体をコントロールし、自立心を奪っている現状では、政策の失敗のシワ寄せは全国民に降りかかり、霞が関は責任を負わない。どちらが真の民主主義かは明白だ。

(柿沼茂喜 =週刊東洋経済)

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