ウィルコムの次世代PHS、離陸への重い課題
PHS事業のウィルコムが、新たに始める次世代PHSサービス(XGP)の概要を発表した。
2009年の通信業界ではモバイルブロードバンドサービスの新展開が注目されている。それが新たな周波数割り当てを受けて展開するウィルコムと、KDDI系のUQコミュニケーションズ(UQ)の高速通信サービスだ。
だが、ウィルコムの立ち上がりはUQと比べて見劣りする。4月下旬にデモ展示を行い、6月以降にモニターへ通信カード貸し出し、10月から本格サービスを開始する予定だが、同社は法人を対象に500ユーザーをモニター募集するのに対し、UQは個人対象で5000人。当初のサービスエリアも東京・山手線内の一部に対し、UQは東京23区と横浜市、川崎市の一部と大きく異なる。
競争環境は急変
会見でウィルコムの喜久川政樹社長は「(周波数割り当てを受けるため)申請した事業計画どおりに進めたい」と話したが、10月以降のエリア展開や当面の加入者目標などについては「競争政策上」を理由に明言を避けた。同社の事業計画は、15年度末までにインフラ整備に2000億円投資し、同年度末の加入者目標を390万としている。ハードルは決して低くない。
しかも計画を立てた07年に比べて環境は大きく変わった。不況の中で携帯3社が契約者の純増を確保する一方、ウィルコムの契約者は09年3月末で456万人と、1年前に比べて約5万の純減。データ通信サービスで競合するイー・モバイルが、1年で100万の純増を果たしたことも苦戦の大きな要因だ。
資金計画について喜久川社長は「XGPはPHS事業から出るキャッシュフローで投資するとの方針は変えない。それをより安定的に事業展開していくための増資を(筆頭株主で米投資ファンドの)カーライル・グループと話しているのは事実」と語った。4月中にもカーライルから50億円の増資を受ける予定だ。
ただ、同社には08年9月期以降、連結有利子負債(1320億円)をEBITDA(営業利益+減価償却費等)で割ったレバレッジレシオを3以下に維持しなければならないとの財務制限条項がある。利益が思うように上がらなければ、投資を抑制せざるをえない。長期借入金でも09年度の返済予定が245億円、10年度720億円と負担が重い。XGPへの投資余力確保は重要な課題だ。
中国故事の画竜点睛を引用し、「XGPという瞳を入れて(点睛)ワイヤレスブロードバンドの世界に飛び立つ」(喜久川社長)と意気込むが、これからが正念場だろう。
(撮影:今井康一 =週刊東洋経済)
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