浜田宏一氏「金融緩和を止めてはならない」

止めてしまえば元の木阿弥になってしまう

もちろん、「外債購入は為替操作などにあたる」といった指摘もあり、国際金融畑でならした黒田総裁がそうした政策に踏み切るかどうかはわからない。また、各市場の厚みの問題などもあり、どんな市場で働きかけても、副作用が増えることは覚悟しなければならないのも事実だ。

明るい米国経済の将来、中国経済に大減速の不安

――昨年末にFRBは利上げに踏み切りました。米国経済の今後をどう見ていますか。また利上げは新興国などからマネーを吸い上げることにもなります。

米国経済の今後については、楽観的に見ている。米国は移民の文化が色濃く残っており、労働力は国外から供給され続け、つねに競争させられる。その意味では、人口動態が落ち着いた成熟した先進国とは言えないかもしれない。こうした点が、米国経済が上向きになっている一つの原因でもある。

私などもいまだに空港に降り立つと扱いが荒く、一つの荷物になったような気持ちにさせられるくらいだ。確かにオバマ大統領の移民政策もうまくいっているとは言えないし、任期の前半、医療保険問題でかなりの勢力を使い果たしてしまった。だが、それでも低所得者層に一定の恩恵があったと言える。

――米国の金融政策が富の二極化に拍車をかけたという批判があります。

金融緩和によって、分配の不平等が避けられるのかはわからない。だが、イエレンFRB議長は金融業界に厳しい規制が必要だという態度を示しつつ、「資産の買い取りなどの金融緩和政策は金持ちを助けるだけだ」という批判に対しては、「それは事実ではない。私たちの政策は、長期金利を下げ、消費の回復を助けるものだ」と反論した。

著者の考えがまとめられた『2020年 世界経済の勝者と敗者』(ポール・クルーグマン・浜田宏一共著、講談社)は1月26日発売(上の書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

彼女は私と同じトービン教授(ノーベル経済学賞受賞、2002年没)の弟子だ。トービン教授はつねに一般国民の生活を重視することを教えたが、彼女は師の教えに忠実であり、彼女の金融行政には社会的正義の視点がある。共和党系の議員やその影響下にある一部のFRBの幹部の中には金融引き締めを主張する「タカ派」もいるが、今後はイエレン議長の社会的正義を重視する態度がより重要になるだろう。

――今後の不安の芽は、やはり中国経済でしょうか。

中国経済の底力は認めるが、2015年の貿易総額は6年ぶりに減少、輸出は前年比2.8%の減少となっている。この状態で本当にプラス成長を維持できているのだろうか。

また、年初から上海株のサーキットブレーカーが発動して、すぐにそれを引っ込めてしまうなど、中国の一連の政策を見ていると、習近平主席をとりまくブレーンについても、本当に経済の専門家なのか疑わしい。昨年夏に起きたいわゆる「チャイナショック」がもう一度起こるかもしれない。

ただ、中国経済の規模は大きい。私は「ゲーム理論」に従って、日本はさまざまな戦略を立て、共存共栄ができるよう手立てを考えるのが賢明な方策ではないかと考えています。

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