グーグル「ブック検索」和解が拡げる日本出版界への波紋

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グーグル「ブック検索」和解が拡げる日本出版界への波紋

「対岸の火事だと思っていた」--。講談社で著作権問題に対応する谷雅志・編集総務局長は戸惑いを隠さない。

米国内での書籍のデータベース化をめぐり、グーグルと出版社側とが争っていた訴訟の和解案が、海を越えて日本に波及している。3月末、大手出版社が加盟する日本書籍出版協会は緊急集会を実施。出版関係者180人が集まり、和解案について熱心な議論が交わされた。参加者からは「自社の書籍がこんなに該当するとは想定外」「今後発刊される書籍への対応はどうなるのか」など、驚きや不安の声が次々と上がった。 

米国の和解案が日本にも上陸

波紋を広げているのは、グーグルが進める「ブック検索」というサービス。グーグルは現在、世界中の書籍のデジタル化を推進している。具体的には、出版社や著者と契約を交わして書籍をネット公開する「パートナープログラム」と、図書館から無償提供された蔵書をデータベース化して公開する「図書館プロジェクト」の2本立てとなる。

今回、日本への影響が懸念されているのは、米国での「図書館プロジェクト」をめぐる和解案である。

グーグルは2004年から、米国内でハーバード大学など主要大学と提携して蔵書のデジタル化を進めている。図書館プロジェクトはパートナープログラムと異なり、出版社や著者と契約を結ばない。そのため蔵書をスキャンしてデータベース化することなどが「著作権侵害に当たる」と訴えられていた。

グーグル側は図書館の蔵書のデジタル化について、米国の著作権法で認められている「フェアユース(公正使用)」条項に該当すると主張。特定の条件をクリアしたうえで批評や教育などを目的とすれば、著作権侵害には当たらないとした。見解は真っ向から対立し、2年以上の歳月を経て昨年10月に和解した。

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