日本の銀行は大丈夫か、膨らむ一方の不良債権--リチャード・カッツ
不良債権は日本の“失われた10年”を象徴する言葉であった。そして現在、失われた10年が復活するのではないかという懸念が強まっている。最近、AP共同電が2008年度上半期の「邦銀121行の不良債権が膨れ上がる」という記事を配信した。しかし、“膨れ上がった”といっても、融資総額に対する不良債権の比率はわずか0・1ポイント増えて2・5%になっただけである。不良債権比率が8・4%あり、“要注意融資”がGDPの約20%を占めていた02年と比べると隔世の感がある。
もちろん昨年9月30日のデータは、その後のGDPの急激な落ち込みと企業の売上高と利益の低迷を考えると、一つの基準にすぎない。適切な政策が講じられれば、銀行の損失と不良債権の合計がGDPの20%に達した“失われた10年”の時代に戻ることはないだろう。
しかし、そうした懸念を抱くだけの理由があることは、誰も否定できない。この数年、企業の売上高は増え、低金利で利払い負担も軽く、利益が増えてきた。しかし、昨年10~12月期の企業の営業利益は前年同期比で60%の減益となり、同時期の営業利益に対する支払利息の比率は37%に達した。6カ月前の17%と比べ大幅に上昇している。こと中小企業に限れば、同比率は31%から44%にまで上昇している。
こうした事態に銀行は利下げを行って経営体質の弱い企業を支えている。06年には全融資の20%の金利は0・75%以下であった。金利が0・25%以下の融資は6%強あった。0・25%程度の金利で銀行が利益を計上するのは難しい。ということは、金利が0・25%ならゾンビ企業でも利益を上げることはできるだろう。
日本銀行がゼロ金利政策に終止符を打って以降、こうした超低金利融資は急激に減っていったが、現在、そうした超低金利融資が復活しつつある。08年1月の時点で金利が0・75%以下の融資は全融資の3・1%であったが、09年1月には7・8%にまで増えている。1年前には金利が1%以下の融資は全体の9%にすぎなかったが、現在では13・6%にまで増えている。
もう一つ懸念材料がある。現在の金融庁の政策には、かつてひそかに不良債権問題を処理した旧大蔵省の政策を思い起こさせるものがある。金融庁は新ルールを適用し、旧ルールであれば不良債権に分類される3112兆円に達する利払いや元本の返済を猶予している“リストラ”融資を、不良債権という分類から外している。こうした隠蔽された不良債権のGDPに対する比率はまだ0・06%と低いが、その額は景気後退が深刻化する中で確実に増加している。