「タワマン街」武蔵小杉が住みやすい真の理由 新旧住民が交わるプラットフォームがカギ

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コワーキングスペースYou+で、左から末永氏、大坂氏、岡本氏

顔ぶれは4人。岡本氏に加え、武蔵小杉ライフなどで情報発信を行っているはつしも氏、NPO法人小杉駅周辺エリアマネジメント(以下エリマネ)の理事で、地元で「メガネのオーサカ」を営む大坂亮志氏、そしてコワーキングスペースYou+のオーナー末永大二郎氏だ。

武蔵小杉で最初にこうした活動が始まったのは、タワーマンション第一号コスギタワーの建設途中だった2007年。そのときに誕生したのが、エリマネである。最近でこそ、耳にするようになった「エリアマネジメント」という言葉だが、日本で組織されるようになったのは2002年の大丸有エリアマネジメント協会(リガーレ)が嚆矢。武蔵小杉では、「小杉地区の暮しやすさを支えるまちづくりの新たな担い手となる総合的な居住支援組織」(設立時資料)として設立された。

「エリマネ」誕生で新旧住民の融合が加速

武蔵小杉のエリアマネジメントの位置付け

エリマネが必要となった理由を、もとから武蔵小杉に住んでいた大坂氏は「タワーマンションが建設された場所の大半は人が住んでいなかった場所。そのため、町内会が組織されておらず、近隣の町内会に合流してもらうにも人数が多すぎる。町会長の多くが70代以上でそこまでの業務増には対応しきれないこともあり、町内会に代わる組織を作る必要がありました」と説明する。江戸時代からの歴史のある街に、1万数千人を超す人口が流入することになるのだから、新旧住民をつなぐ組織がなければ街は崩壊しかねない。その危機感が組織を生んだ。

当初はマンション住民がまだいないため、地域の町内会、商店街、市民活動団体が参加して始まったが、現在では理事長以下21人の役員のうち、14人がマンション住民。町内会のないマンション住民には町会代わりであり、街全体から見れば、関係団体を束ねるプラットフォームとも言える。

2015年のこすぎフェスタは2日間開催で前夜祭まで。年々賑わいを増している

エリマネの主な活動は、街に寄与する「公益事業」と加盟するマンションに共通する利益を模索する「共益事業」の二つだが、その内容は多岐にわたる。

たとえば、乳幼児のパパママの交流サロンや地域清掃活動、読書を通じたコミュニティ、10万人もの人を集めるようになったコスギフェスタといったイベント系のほかに、防災や防犯に関する活動や広報誌製作などもある。担当理事が中心となって活動しているそうだが、よくもこれだけの活動が同時に行えるものだと感心する。また、共益事業ではマンションの交流、情報を交換することで管理費削減を実現しているという。

住民の高齢化、少子化などで開かれなくなる祭りも多いが、武蔵小杉ではマンション住民の協力で再開

それ以上に効果が大きいのは新旧住民が自然と交わるようになってきていることだろう。

「町内会の高齢化で何年も行われていなかった夏祭りを今年復活することができ、神輿はマンション住民も担ぎました。商店街のイベントをエリマネが手伝うことで高齢者に足りない力を若い人が、若い人が知らないノウハウを高齢者が補う形もできてきています」(大坂氏)。

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