国民選択の政治を実現するという強い意思を持たない与野党政治家は民主主義の敵

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国民選択の政治を実現するという強い意思を持たない与野党政治家は民主主義の敵

塩田潮

 敵失にもかかわらず今一つ波に乗り切れない麻生首相と、「長考」と称して居座り態勢に入った小沢民主党代表との「へぼ将棋」のような展開で、政局は思いがけず奇妙な「なぎ状態」だが、政治情勢の変化にもかかわらず、政治の最大の焦点は今も解散・総選挙の行方である。次期総選挙が事実上の史上初の政権選択選挙であることに変わりはない。
 ところが、向こう5ヵ月以内の総選挙は確実なのに、与野党とも準備の遅れが甚だしい。といっても、候補者選定や選挙運動などの選挙態勢の話ではない。遅れが目立つのは広い意味の政権構想である。

 与野党とも、総選挙の前に、選挙後の政権の基本方針、路線、政策、諸課題に対する解決策、長期的な将来ビジョンを国民に明示すべきだが、まだ十分ではない。それ以上に誰を首相に担いで政権を担うのかという点も曖昧なままだ。
 振り返ると、政治のターニングポイントとなった過去の何回かの総選挙でも、以上の重要な点を明確にしないまま、選挙日を迎え、選挙後の政権や政治が選挙で示された国民の選択とは似てもて似つかぬ方向に向かってしまった不幸な例は数多い。

 1993年7月の総選挙の後、選挙結果とは裏腹に、負けた自民党と社会党が1年後に敗者連合の政権をつくって有権者を裏切った。2005年9月の総選挙も、郵政民営化だけを掲げて大勝した小泉首相が1年後に「後は野となれ山となれ」と政権を降りたため、以後、安倍、福田、麻生の3代内閣の迷走と自民党の漂流が起こり、国民が見放して支持率低落となった。

 時の首相も政権を目指す野党も、いつどうやれば勝てるかだけを考えがちだが、国民は数年に1度の機会に政権と政治をきちんと選択したいと思っている。国民の選択に基づく政治を実現するという強い意思を持たない政治家は、与野党を問わず、民主主義の敵だ。有権者は次の総選挙で誰に投票するかを決める際、その点を最大の基準にすべきだろう。
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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