【産業天気図・化学】化学産業は原燃料価格の高止まりを主因に「曇り」が続く
化学産業は原燃料価格の高止まりを主因に2008年度前半・後半とも「雲り」が続くと予想する。そのうえで個別企業の08年度業績は手掛ける品種と事業分野により増減益がわかれることになるだろう。
主要原料であるナフサ(粗製ガソリン)購入価格は03年10~12月時点の2万4000円に比べ現在は3倍弱の水準に達している。結果として通期の平均購入価格は07年度は6万3000円強、08年度は約7万円へ上昇すると予想される。ただし、今回の原燃料高騰の過程では日本の化学産業各社も顧客企業とナフサ価格連動方式(ナフサ・リンク・フォーミュラ)の価格決定契約を締結するようになったため、石油化学の最上流品種であるエチレンやプロピレンなどに関しては3カ月程度の遅れは伴うものの自動的に製品販売価格が引き上げられる。たとえば総合化学6社のなかで唯一12月決算の昭和電工<4004>は一足早く08年度見通しを営業増益として発表済みだが、それも電子・情報分野の復調で石油化学の利幅縮小を補えるメドが立っているためだ。
とはいえ、アジア地域における需給に製品販売価格が影響される品種もある。たとえば三菱ケミカルホールディングス<4188>などが生産するポリエステル繊維・樹脂原料の高純度テレフタル酸には中国現地企業各社の増設による需給緩和が逆風。一方で旭化成<3407>などが生産するアクリル繊維・樹脂原料のアクリロニトリルへは中国製家電向けアクリトニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂の需要拡大が追い風。かたや三井化学<4183>などが生産するウレタン原料のトリレンジイソシアネート(TDI)は欧米企業の中国合弁工場の稼働が軌道に乗れば追い風は弱まる。つまり中国における需要と供給に影響される品種も数多くあるわけだ。
さらに、事業分野ごとに風向きは異なる。隔年の薬価引き下げは医薬品分野の比重が大きい住友化学<4005>などへは逆風。建築確認遅延も旭化成や積水化学工業<4204>などに逆風。一方、北京五輪特需が大きければウエハの信越化学工業<4063>、フォトレジストのJSR<4185>、封止材の住友ベークライト<4203>など半導体材料を手掛ける各社に追い風となるが、その確度はまだ高くない。
もともと08年度は東ソー<4042>はじめ増設の先行負担期となる企業が多いのだが、そこへ品種と事業分野ごとに逆風や追い風が吹き、利益動向が決まることとなろう。
【石井 洋平記者】
(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら