辞め時と辞め方の選択から明らかになる小沢氏の本質

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辞め時と辞め方の選択から明らかになる小沢氏の本質

塩田潮

 自滅・沈没の森元首相、目的完遂・天寿全うの小泉元首相、満身創痍・放り投げの安倍元首相、やる気喪失・投げ出しの福田前首相。
 首相や党首など政治リーダーの個性と人間性は、いつどんな形でトップの座を手放すのかという退陣の仕方に色濃く表れる。辞め時と辞め方というフィルターを通せば、その政治家の本質が透けて見える。

 首相ではないが、いま一番の注目の的は小沢民主党代表だ。過去を振り返ると、小沢氏は、トップに就くとき、いつも頑固なほど慎重で、なかなか腰を上げないのが特徴だった。「躊躇と逡巡の政治家」と言われたこともある。ところが、辞める話では思い切りのよさが目立った。
 新進党はスパッと解党した。例の07年11月の大連立頓挫の際も「プッツンした」と言って放り投げようとした。秘書起訴の24日の続投会見でも「代表の地位になんの未練も執着もない」と言い切った。目標は政権交代の一点で、党首の座も、政権交代実現後の首相のポストも望みではないと言いたいようだ。進退問題では、一見したところ、権力や地位へのこだわりのなさ、淡泊さが持ち味と映るが、それは実像か虚像か。

 目標の政権交代実現には、思い切りのいい早期の代表辞任こそ近道である。小沢氏自身、その認識はあるはずだ。なのに、即辞任は検察の主張、それに自身と秘書の非を認めたことになるという気持ちが先に立ったとすれば、民主党と政権交代を望む国民を、検察との攻防戦の巻き添えにする愚行と言われても仕方ない。
 続投会見で「国民の受け取り方次第。国民の意見を聞いて判断する」と言い添えた。ひょっとすると辞め時と辞め方を探っていると見えなくもない。それとも「人の噂も75日」と頬冠りしたまま嵐と逆風が過ぎるのを待つ腹なのか。「稀代の風雲児」の異名を辛うじて守るのか、ただの「権力志向の金権政治家」で終わるのか。辞め時と辞め方の選択から、小沢氏の本質が明らかになる。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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