事実!「声をかけやすい人」は仕事ができる ANAの気づかいは、こんなにも合理的

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あるベテランCAは、ゆっくりと歩きながら、「Sの字」で機内を見渡すようにしている、と言います。お客様のテーブルの上だけでなく、顔の表情から出されるサインを見逃さないようにする。そして目が合ったお客様には、何かお手伝いできることはないか、必要なものはないか声をかけるように心がけています。

これは、会社のオフィスでも応用可能です。あなたがチームリーダーなら、メンバーの机の周りを、特に用事がなくてもゆっくり歩き回ってみてください。わざわざ報告には来なかった部下から、「実はこんなことが……」と言われる機会が増えるはずです。

「権限」と「権力」を履き違えてはいけない

本人が意識しているかどうかは別にして、部下など下のポジションの人たちを率いる上司は、仕事上の「権限」をもっているものです。

権限とは、ある範囲のことを正当に行うことができるものとして与えられている能力。また、その能力が及ぶ範囲のこと。上司には、上司として果たすべき責務が与えられているはずです。ANAでいえば、安全運航を果たす、法令を守る、機体整備完了の確認をする、などです。そうした責務を果たす上で、必要なものとして与えられている能力が「権限」です。

しかし、権限は、ときに「権力」に変わりがちです。権力とは、他人を強制して服従させる力です。「権力」となると、相手がどのような感情を抱こうとも、強制的に自分のやりたいことに従わせるといった意味合いをもつようになります。

上司が権力を振りかざすような態度をとってしまえば、「声をかけづらい人」になってしまい、部下から適切な報告が上がってこないおそれがあります。権力によって部下を服従させようとすると、スムーズな人間関係を築けず、チームとしての仕事もうまくいきません。

ANAのパイロットが受ける教育プログラムでは、「権限が権力にならないように心がけよ」と教え込まれます。

ある機長はこう話します。「権限に見合う振る舞いをしているかどうか、常に考えています。権限を使っていたつもりが、権力を振りかざすようになってしまうと、部下の社員たちから、それは違うだろうと捉えられてしまいますからね」

権限と権力は線引きしづらいもの。別ものであるということを常に意識して仕事に取り組むのは、なかなか難しいことではあります。けれども、こんな意識をもっていると、その違いを明確にできるのではないでしょうか。

・仕事の目的を達成するために部下を動かす力が「権限」

・自分の役職の高さを利用して部下を動かす力が「権力」

権限とは何か、そして権力とは何か――。それぞれに対して明確な意識をもち、権力でなく権限をもって部下に指示をする。これも部下への気づかいのひとつといえます。こうした気づかいを積み重ねることによって、伝えたいことが伝わる人間関係をつくることができるのだと思います。

ANAビジネスソリューション
えーえぬえーびじねすそりゅーしょん

ANAホールディングスの100%子会社。ANAグループのノウハウを活かし、主に「研修事業」「人材派遣事業」を行う。研修の内容は「接遇&ビジネスマナー」「ヒューマンエラー対策」「チームビルディング」「訪日外国人おもてなし」など。メーカー、小売り、サービス業、医療機関、自治体など、あらゆる業種、業態からの依頼を受け、企業・個人に向けた研修を行っている。社内で「青い血」と呼ぶDNAの継承を大切にしており、研修はすべて、 ANA社員として長年勤務してきた、あるいは現役で勤務する講師が務める。著書に『どんな問題も「チーム」で解決する ANAの口ぐせ』『仕事も人間関係もうまくいく ANAの気づかい』(ともにKADOKAWA)がある。
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