ガイトナー米財務長官に高まる辞任圧力、政治的力量に疑問の声


 米国のガイトナー財務長官は、まだ就任して2カ月しか経っていないのに、その職を失いそうな危機に直面している。共和党議員はガイトナー罷免を要求しており、国民のガイトナー長官の印象もAIG幹部への高額ボーナス支払いを見逃したことなどで傷ついてきている。

オバマ大統領は、複雑極まりない難しい問題の処理に立ち向かうガイトナー長官には同情的で何度もかばっている。21日の米国CBSテレビとのインタビューでも、オバマ大統領はガイトナー長官が辞任を申し出ても認めないと語っている。

確かにガイトナー長官は就任予定の財務省高官の”身体検査”があまりに厳しいために、いまだに財務副長官も財務次官補も決まらず、孤軍奮闘的な状況だ。財務省は金融の信用不安問題から自動車救済、景気刺激策、健康保険システム改革など、何から何まで関わっている。現在の穴だらけの財務省の組織では、通常でも諸問題をこなし切れるものではない。ましてや未曾有の危機である。

ガイトナー長官はこれまでのところは、個人攻撃の標的にはなっておらず、よくあるホワイトハウスからリークされる情報による解任の予兆もない。しかしガイトナー長官が経済危機に関して、世間から信頼を勝ち得る上手な”広報活動”ができているかというと、そうではないのも事実だ。これから自動車業界、金融、住宅の救済でさらに資金が必要になったとき、うまく議会を納得させられるかどうか、心もとないと思われている。

オバマ大統領は大衆を支持基盤としているだけに、仮にガイトナー長官の悪化するイメージを転換できず、ガイトナー長官の今後の働きも悪ければ、国民はその批判の矛先をオバマ大統領に向け始めるかもしれない。そうなるとガイトナー長官の続投がホワイトハウスで検討課題になってくるだろう。

ガイトナー長官自身の知力、そして実務的な力量について疑いをさしはさむ者はいない。だがガイトナー長官はその性格から、静かで内気、カリスマ性がないとみなされ、国民や容赦ないワシントンの政治家たちから、軽量だと謗られ始めている。一度、そのようなレッテルをはられると、それを取り除くのは難しい。

ガイトナー長官にはまだ時間があるので、その国民のイメージを自分でうまく転換させなければならない。もっと上手に国民に説明責任を果たし、ウォール街の不正には厳正な態度を見せなければならない。それが彼を長官の地位に留めるだろう。そしてもちろん景気に回復の兆しが見えれば申し分ないのだが。
 (ピーター・エニス =東洋経済在米特約記者)
写真: United States Department of the Treasury

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