高給取りの「製薬営業」が大量にクビにされる訳 ピークから1万人減、コロナ禍で過剰体質も露呈
「今回のリストラで人が辞めすぎて、現場の雰囲気はとても悪くなっている。部署によっては人手が足りず、思うように営業ができていない」
国内製薬最大手の武田薬品工業は今年8月、国内の営業部門を対象に希望退職者を募集した。同社のMR(医療情報担当者)は、国内全体でおよそ2000人。会社側からの発表はないため詳細は不明ながら、今回500~600人程度が応募したのでは、という見方が社内で飛び交っている。であれば、各現場の3~4人に1人が会社を去った計算だ。同社に残った現役MRのA氏は、冒頭のように現状を語る。
「辞める」と言うまで続いた面談
MR(Medical Representative)は、担当の病院やクリニックに足しげく通い、自社製品を使ってもらうために医師や薬剤師に営業をかけるのが仕事だ。武田や第一三共といった国内大手クラスだと2000人以上のMRを抱えており、単体従業員の3分の1以上を占めている。
しかもMRはかなりの高収入職種だ。大手であれば40歳で年収1000万円超えは当たり前。福利厚生も充実している。しかし、製薬会社にはその営業部門の人員が負担になり始めている。
2019年度のMR数は5万7158人と、2018年度に比べて2700人余り減った(約4.5%減)。ピークだった2013年度からはおよそ1万人、1割以上減っていて、6年連続で減少している。しかも減少スピードは年々上昇。2019年度の減少幅は過去最大となった(MR白書)。
『週刊東洋経済』12月14日発売号は、「製薬 大リストラ」を特集。製薬業界でここ数年吹き荒れているリストラの嵐を徹底取材した。製薬会社が置かれた厳しい経営環境や、そのあおりを食うMRの悲哀をリポートしている。
武田では、募集が始まり全対象社員に行われた面談において、人によってその内容や回数に大きな違いがあったという。武田の中堅MRのB氏は、「昔の上司の何人かから、辞めることになったと連絡が来た。私は形式的な面談2回だけで終わったが、40代後半から定年間際の人には5回以上の面談もざらにあった。『辞める』と言うまで繰り返されていたようだ」と話す。
退職者が確定した11月、社内で組織の再編が行われた。新体制になってからの営業現場では、「生活習慣病(糖尿病や高血圧など)の領域の薬を担当するMRは、“生産性”を今までよりも上げろ!」という号令がかかっている。ある部署では、これまでの8倍の業務量をこなすよう指示を飛ばす上司もいるという。
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