精神を病んでしまった経済学を救う術はあるか

もしユングとフロイトが経済学の魂を診たら

4. 衝動制御障害:本書では2つの行動パターンを扱う。1つは病的な賭博癖で、とくに投資銀行に関連する市場行動にそれが認められる。もう1つは窃盗癖(クレプトマニア)で、いささか驚きかもしれないが、現在主流のシステムの奇妙な性質によって説明される。それは「最も成功する人は、何も引き換えにせずに仕事や財産や資本を獲得している」ことだ。

この失調は、経済的商取引の根底にあるメカニズムから力を奪う。本来なら全構成員がフェアだと感じる富や仕事の交換によってのみ、システムは保持されるはずだ。

システムが病的な経営者を生み出す

最後は人格障害だ。

5. 人格障害:攻撃や競争を特徴とするシステムを維持するためには、構成員をふさわしく教育しなければならない。経営者はエゴイズムや野蛮な競争に適合するよう訓練され、システムのための道具と化す。利他主義や思いやりや良識は二の次にされる。

だが、人間が作ったそのシステムはもはや創造主に仕えるのをやめ、自身が支配者の座につき、その結果、労働世界はすべての構成員にとってハムスターの回し車に限りなく近づいている。

おおげさにいえば、現代の経営者は職場に足を踏み入れるや無慈悲なハイド氏に変身し、仕事を終えて帰宅すると心優しいジキル氏に戻る。モラルの低下にも経営者の非道にも、システムは知らぬ顔だ。経営者は本来ひどい人間でなくても、システムによって病的な役割を押しつけられてしまうのだ。

精神分析の方法と同じように、本書のつとめは相手の話を聞くことであって、誰かに責任を負わせたり告発したりすることではない。だから、資本主義によって形づくられた市場経済や銀行や金融市場を否定はしない。

もろもろの批判にもかかわらず、私たち著者は現在の経済秩序を、世界や人々をより豊かにするだけでなく、よりよくしてきたシステムだと考えている。だからといって、その誤った展開を批判的に分析するのをやめるつもりはない。本書では、システムの病質を全般的に説明し、可能ならば、治療法も紹介したいと考えている。

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