超高齢化の島「網地島」はよみがえるか 震災で打撃を受けた離島で復興に向けた取り組みが進む
東日本大震災をきっかけに、東北地方の過疎化に拍車がかかっている。とりわけ地理的条件の厳しい離島では、無人島化の危機すらも現実味を帯びている。
そうした中、危機を逆手に取り、島をよみがえらせるプロジェクトが始まった。舞台は、宮城県牡鹿半島の鮎川港から4キロメートル南西、石巻港から18キロメートル南東に位置する面積6.43平方キロメートル、人口416(2月末現在)の網地島(あじしま)だ。
3月中旬、島内に点在する休耕地を小型耕運機を使って耕す作業が始まった。ジャガイモの種芋を植えるためだ。
まだ寒さが続く中、黙々と作業を続けるのは山本光剛(みつたか)さん(27)。昨年末まで陸上自衛隊に所属していた青年だ。
北九州市出身の山本さんは、防衛大学校、陸上自衛隊幹部候補生学校などを経て、神奈川県座間市の陸上自衛隊第四施設群に配属されてまもなく、東日本大震災が起きた。宮城県石巻市牡鹿地区で捜索活動に従事したのが縁で、被災地とかかわりを持った。
昨年、ホームページで石巻を拠点に被災者の支援を行う「チーム王冠」(伊藤健哉代表理事、47)を知り、ボランティア活動に参加。これを機に一念発起。自衛隊を退職。網地島に移り住み、設立されたばかりの「農事組合法人網地島エーベ」のメンバーに加わった。
農業を通じて島おこし
「エーベ」はAgriculture(農業)のA、そしてBenefit(恩恵)のBeをつなぎ合わせたものだが、網地島の方言で「行こう」という意味もある。
発起人の一人で網地島エーベ代表理事を務める阿部孝博さん(69)は、「農業を通じて島おこしをしたい。目標は島内での自給自足です」と言い切る。
島で育ち、中学卒業と同時に漁船の乗組員として島を離れた阿部さんは現在、石巻市不動町の自宅と網地島を行き来する生活を続けている。
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