フェラーリの旧車が「億円単位」で売れる理由 10年で5倍の価値にハネ上がった車も

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フェラーリ 250 California(Artcurial)

オークションハウスはクラシックカーの総合的サービスを世界レベルで請け負うから、古い歴史を持つクラシックカー・ディーラーも、ブローカーたちの商売が成り立たなくなる。

ほんの少し前までは、ローカルな情報網をベースに密室で行われていたクラシックカーの売買は大きく変貌を遂げ、世界規模のマーケットとなった。「お金持ちの道楽だ」と、いってしまえばそれまでだが、中には100万円台の出展車もある。自前で綺麗にレストアし、資産運用しながら楽しむ手もあるかもしれない。

フェラーリの大きな戦略が活性化につながった

フェラーリが強気に値上げしても売れる理由』という記事を先日書かせて頂いたが、フェラーリのクラシックカービジネスへの積極的なコミットは同社が行っているF1ビジネスと共にブランドの価値を高める大きな戦略である。そのフェラーリと共にオークションハウスが行った取引の透明化による顧客の拡大がうまくマッチし、クラシックカー・マーケットが活性化されることとなったのだ。

日本もバブル期には多くの価値あるクラシックカーが世界中から集まり、ほとんどオーナーが乗ることもなく綺麗に保管された個体も未だ多く存在する。ヨーロッパのように地続きでないという地理的要因やコトバの問題もあり、時として日本独自の、世界的にみると格安なクラシックカー相場が存在することから、ブームの今は世界中のオークションハウスは日本にあるクルマを狙っている。

どんどんと海外に出て行ってしまう名車達を見るならば、クルマ好きとしては残念な気持ちとなってしまうが、それは高価な輸入車だけではない。国産でも日産自動車の「スカイラインGT-R」などはその対象となっているのだ。日本のメーカーもクラシック・マーケットに関するコミットを戦略的に行わないのはかなりもったいないことだ。ドイツ車はこのことに気づいて、取り組みを積極化している。

日本にも多くのすばらしい名車が存在することを大いにアピールしたいものだが、日本においては古いクルマを持ち続けることに対する強い逆風があることも忘れてはならない。クラシックカーという存在がどういう意義をもったものであるかという、大げさに言えば日本のクルマ文化のあり方という根本的な問題にも、これは繋がってくる。

越湖 信一 PRコンサルタント、EKKO PROJECT代表

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えっこ しんいち / Shinichi Ekko

イタリアのモデナ、トリノにおいて幅広い人脈を持つカー・ヒストリアン。前職であるレコード会社ディレクター時代には、世界各国のエンターテインメントビジネスにかかわりながら、ジャーナリスト、マセラティ・クラブ・オブ・ジャパン代表として自動車業界にかかわる。現在はビジネスコンサルタントおよびジャーナリスト活動の母体としてEKKO PROJECTを主宰。クラシックカー鑑定のオーソリティであるイタリアヒストリカセクレタ社の日本窓口も務める。著書に『Maserati Complete Guide』『Giorgetto Giugiaro 世紀のカーデザイナー』『フェラーリ・ランボルギーニ・マセラティ 伝説を生み出すブランディング』などがある。

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