日米同盟強化と対中関係改善は両立できるか 2016年は日本外交の構想力と実力が試される
一方、中国側の問題点は、習主席が、就任前から対米関係構築の基軸として強力に推し進めて来た看板政策、「新型大国関係」が一向に実現するメドが立たないことだ。2013年にいったんオバマ大統領が受け入れを表明した時点と比較すれば、米国の姿勢は明らかに後退した。
オバマ政権幹部は、「米国はもうこの用語は使わない」と言い切る。2014年11月、2015年9月と過去2回の共同記者会見での、両首脳の発言を点検すれば明らかだ。習主席はともに3回ずつ「新型大国関係」に言及しているが、オバマ大統領は一度も口にしていない。誰の目からみても行き詰まりが明らかなのに、習主席がこの用語を使い続けるところに、中国の対米外交の苦しさが浮き彫りになっている。
「政治の季節」に入り、米中関係の好転は見込めず
2016年11月には米国で大統領選挙が予定されている。米国はすでに、あらゆる政策課題が、選挙の戦略、戦術の文脈で語られる「政治の季節」に突入している。2017年1月に次の大統領が就任するまで、冷静な政策論議は期待できない。南シナ海問題とサイバー問題を中心に、米国内には中国に対して厳しい空気が広がるなか、2016年中に米国が譲歩する形で米中関係が好転することは考えられない。
中国については、習主席がすでに権力基盤を固めたとの見方がある一方で、経済の減速傾向は今年も続くとの予想が支配的だ。それが中国社会の安定にどういう影響を与えるのか。世界が不安を抱きつつ、見守る状態が続きそうだ。当面、習政権には対米関係でこれまで以上の「仕掛け」をする余裕はないだろう。
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